冒険者になろう
「ハッカお姉ちゃん、どういう事?」
突然の私の発言に呆気に取られるテミスちゃん。
驚きの提案だけど、私は別に滅茶苦茶な思い付きをした訳じゃない。
「正直言って、テミスちゃん。
今すぐあなたをお家に帰してあげるのは難しいと思うの。
ごめんなさい。」
文無し情報無し手助け無しでは出来る事は限られる。
宣言した途端、テミスちゃんの顔が曇る。
それは、帰れないという落胆だけでなく、私が責任を感じていると
「お姉ちゃん、謝らないで。
お姉ちゃんは私達を助けてくれたんだから。
気にしないでお姉ちゃんは私を置いて…」
「残念ながらそれは出来ないの!」
しおらしく別れを口にしようとしたテミスちゃんの言葉を遮った。
「乗り掛かった船は沈むまで…否!たとえ沈んでも縄で引っ張って最寄りの港まで運ぶのが私の流儀!
家に帰る手立ても場所も解らない女の子を街のど真ん中に棄てて異世界ライフに勤しむなんて、JKと女が廃るってものよ!」
最早これは私の意地……否!矜持
「先ず冒険者に成って文無しを脱却する。
次に情報を集めて貴女の故郷を特定ないしは絞りこむ。
したらあとは貴女に出して貰う依頼、『家に帰るまでの護衛をする』を冒険者として、依頼として果たす!
私としては、何も目的の無い、何の面白味もない異世界ライフに目的と意味が出来るから丁度良いの。」
我が言葉に、嘘偽り、
テミスちゃんがそれを聞いて表情が変わった。
「最後に、テミスちゃん、私は自分がやりたいから貴女の力に成りたい。
だから、貴女が故郷に帰りたくないなら私は強制しない。
テミスちゃん、訊ねます。貴女は故郷に帰りたくないの?」
私としては、断られたとしても、何だかんだ言って独りのこの子を連れ回す気は有るんだけど。
「………ハッカのお姉ちゃん?いいの?」
「無論。JKに二言は無い!このセーラー……あのセーラー服に誓って!」
「お姉ちゃん。私をお家に帰して。」
テミスちゃんはそう言った。
決まりだ。
「解った。それを依頼として、私は受ける。
待ってて。ちょっと冒険者に成って貴女の依頼書を作って来るから。」
そう言って私は受付と思しき場所へ走っていった。
「おっと嬢ちゃんちょっとゴメンよ。」
大きな剣を持った額に傷の有るおじさんが走る私の前に立ち塞がった。
トッ シュッ
男の左側に左足を踏み出し、それを軸足に身体を右回転。男をすり抜けてそのまま走っていった。
「な………」
おじさんの間の抜けた声を背に受付に急いだ。
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