愛の死に方
DJ家系ラーメン
婦人科の鯉
五臓六腑を踏みにじられるような恋をして文字通りまんこが死んだ。
いや死んだというのは大げさだったかもしれない。
「毛嚢炎ですね。産婦人科初めて?子宮内検査した事ある?」
禿げ上がった医師は私の緊張を察したのかやけに爽やかに聞いた。
「じゃあ少し、違和感あるかもしれないけど我慢してね。」
ひんやりとした器具が膣内に入ってくる。添えられた手はまさしく他人の手で、でも恋人の手でもなくて、なんとなく幼少期に外で親に抱えられておしっこしたときを思い出した。
「子宮の大きさは普通ですね。検査するんで10分ほど待ってください。お疲れ様です。」
冷たい器具がぬるりと抜けて、私の膣内に静寂が戻ってくる。パンツを履いて、ジーンズのベルトを締めて診察室の外のベンチで待った。中庭の濁った池に鯉が泳いでいる。平日の昼間だった。院内にはオルゴールのBGMが流れていた。やがてひとり、隣にお腹の大きな妊婦が座った。カバンからピンクの体温計を取り出してきっちり前を向いて体温を測っていた。ああ、これがきっと産婦人科の正しい使い方だ。この人はきっと正しいセックスをしたんだろう。そんな事を考えていると無性に煙草が吸いたくなった。看護師に呼ばれて審査室に戻りまあるい椅子に腰掛ける。医師は双眼鏡を覗き込んでいた。理科室で見た事があるやつだった。
「子宮内膜炎症ですね。」
「しきゅうないまくえんしょう。」
「大腸菌がいます。お腹痛かったでしょう、生理じゃない日も。」
軟膏と、抗生物質出しときますから。それで治るやつだからね、と子どもに言い聞かせるように医師は言った。子どもだったのかもしれない。私はまだ23だった。
子宮内膜炎症の理由は分かっていた。アナルセックスだ。受けつけで出された抗生物質は4種類もあって軟膏も2種類あった。私は2日で飲むのをやめた。だって死にはしないから。
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