落涙器


そこから見れば

快晴にしか見えないのだろうが

ここから見れば

ひとしきり土砂降りのような悪夢


手渡しておくべきだった

 吹き荒れる直後の懺悔も

 ほどなく形式的な表層に漂着

代案らしい代案も出さず

 議論することの価値を議論し

 いたずらに後らかしていく腐臭


何度目の過ちか

数え、分析し、評価するのが馬鹿らしい

忘却を危惧していたことさえ

なめらかに忘却していくことに慣れっこ


奏で落ちる弦楽

憂いを増していく夜半

気軽な現実逃避とは思いつつ

落涙することでしか

この時代に この場所で

 絶望に浸ることも満足にできそうになく



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【 初出 】


詩のブログ

『 橙に包まれた浅い青 』


2021年07月07日

「 落涙器 」

http://komasen333.blog.jp/archives/10339889.html

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