僕には彼女がいない
竹海 伸空
第1話 序章
僕には彼女がいない。未来にもきっといないし、過去にできたということも特にはない。
別段珍しいことではないだろう。人に好かれる訳でもなし。人を好きになっても相手を気遣えない。気遣っているつもりになって自分に酔っているだけ。
こんな薄っぺらい人間、見透かせない方がどうかしているというものだ。
だが、それでも人を好きになる。これは本能だ。どうしようもない。
これは、僕が愛した二人の女性と、僕らを取り巻いた学校のなんの変哲もなくて下らない、
過去に追いすがるだけの見苦しい追憶の物語だ。
まずは僕、そして彼女たちが身を置いていた環境に触れよう。
愛知県、名古屋市のある所からもう少しだけ北、岐阜という県の少し都市化した市を中心とする東農と呼ばれる地域。調べてみれば意味が分かるかと思うが、岐阜県をプードルと見るなら、その前足がある辺りだ。そこにある、南高校という高校と、その附属中学校。
そこで過ごした六年間が僕らの日々を紡いでいった。
この中高の最大のイベントと言えば、なんといっても学園祭であった。
部門に分かれ中学生は三学年を合わせた上で幾つかの初夏の辺りに準備を始めて、夏休みを返上して準備を進め、休み明けに二日間かけて開かれる。特に有名でもないし、一般のお客さんは参加できないしさして大きいものでもないが、それでも僕らにとってはとても大事な祭りで、大切な思い出の大きな大きなピースであったことを、心の片隅に置いておいてもらえたら、と思う。
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