第04話 どうして私?


 「明石くんはどこが気に入って、桜に告白したのかしら?」


 明石と椿が”仮面”である事を明かされた次の日の放課後。志摩が明石について、宮坂と三つ編みの友人に延々と語っていた時、三つ編みの友人がふと呟いた。


 「私の可愛さに一目惚れしたんだよ!」


 「…………………………………」


 「…………………あんたそれ自分で言って恥ずかしくないの?」


 志摩の即答に答えたのは宮坂だった。

 志摩は、ばっと両手で顔を覆う。


 「突っ込んでよ…。それにだ、だって…一度も話した事ないのにいきなり声かけられたんだもん…。」


 三つ編みの友人が、慰めるために志摩の背をさすろうととすると…

 

 「ちょっと明石くんに聞いてくる!」


 志摩はばっと立ち上がり、教室を駆け出して行った。


◇◇◇◇


 「明石くん!!」


 私は明石くんの教室に駆け込んだ。放課後に入ってそれなりに時間も経っていて、教室には帰り支度をしている明石くん一人だけだった。


 「ど、どうした志摩。」


 「どうして私に声をかけたの!?」


 明石くんは少し恥じらうように私から視線を逸らす。その頬は朱に染っていた。


 まさか、本当に…


 「一目惚れしてな…………」


 やっぱりっ!?


 「……その………………………」


 その?


 「……………………お前の隣で歌ってた奴の歌声に。」


 「って、ちょっと待ったぁぁぁぁああああああああああああ!」


 ◇


 「ちょっと待ってよ、明石くん!私ですらないじゃんっ。どういうこと!?」


 明石くんは申し訳なさそうに二本の人差し指をぐるぐると回す。


 「いや、てっきりあの綺麗な声の主は志摩だと思って声をかけたんだが。あとで椿に聞いたら合唱部の有名人だったらしくてな、完全に人違いだった訳だ。」


 明石くんはスッキリとした表情で残酷な事実を告げる。


 「そ、そんな………。じゃあ、もしかして私っていらない子!?」


 「そ、そんな事ないぞ志摩。昨日の質問に答えてもらって、志摩に任せる仕事ももう決まっている。」


 明石くんがわたわたと慌てる。


 「ぐすっ。に、荷物持ちでも、なんでもやります…」


 「そんな仕事ないからっ!志摩には衣装とメイクをやってもらおうと思っているんだ。」


 なんだかかっこいい仕事名にぴくりと体が反応する。


 「衣装とメイク?」


 「そうだ…」


 しかし私はすぐに気付く。


 「そんなパート、バンドにはないよ…。ご、ごめんね。私が気を使わせちゃって。」

 

 「違うぞ、ちゃんとあるぞ。

 そもそも、”仮面”ってのもバンドの名前じゃないからな。」


 「えっ!?」


 「まあ、いい機会だ。志摩、この後時間あるか?」


 「え、うん。あるよ。」


 「バンドメンバー以外の”仮面”メンバーに会ってみるか。その道中で”仮面”について説明しよう。」

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ころいど! 〜知らない男子に告白されたけど断ろうと思います~(改題中) 白原 文 @sirobara00729

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