第20話

所変わってピンクの黒豹族ノエムは

白い繭の中に居た

時折赤い炎の様な揺らめきが

繭の滑らかな曲線を

舐める様に瞬くと

糸の一本一本が溶ける様に絡みつき

一瞬舞い散る雪のように

桜の花びらのように

ふわりと舞い落ちる幻視がして

白い深い霧のように

シュウシュウと

シュワシュワと

気泡のように

水飛沫のように

滾々と湧き出る

まるでホイップクリームのような

滑らかな泉のような

湧き出る泡に包まれて


そもそも黒豹族とは何ぞや

見た目は獣人亜人の類

魔族と言う事は

当然魔石がある

等級で言えば

より黒いほうが純度が高く

より強い力があると信じられている

女神に従属する獣の代表では

ライオン

強く集団の狩では

他の追随を許さない

太陽神の眷属や

軍神の戦車を引くのも

ライオンであるが

魔族の頂点が黒豹なのには訳があり

闇の眷属として夜目が利く

猫精霊ケットシーと

友好的で付き合いがあり

何より獣神に可愛がられており

スキルやギフトなど

様々な優遇を受けた


黒猫は8つの魂がある

そして九炉豹は

九つの命の火を灯す

赤い命の炎を燃やして

蛮族から魔国を守りぬいた

黒く煤だらけの亡骸に

大地母神と獣神が

命を吹き込めたのが

黒豹族の始祖にあたる

その絶妙な熱量操作は

灼熱の火炎から

岩を熔かし

極寒の冷気から

大気さえ氷らせる

陰に潜み

闇に紛れ

音も無く

忍び寄り

魔力を纏い

超常の身体能力を発揮する


伝説の存在


ノエムの祖母は

ヒョウといい

最初は黒い猫のようだった

珍しい精霊憑き

名をメイという

常闇の水の大精霊

徐々に色が抜け落ち

雪のような牙が

サーベルのように

上顎から2本伸び

斑だった体毛が

いつしか雪豹のような

神々しい姿に

危機感を募らせた長に

決闘を申し込まれ

出向いた先で囲まれ

氷雪魔法と

スキル鏡冥止水で

悉くを討ち取り


精霊の仲立ちで

ヘルキャットの集落で過ごす

そこで生まれたのが

母赤影

炎の極閻魔法を極めた

黒曜の君


時は流れ

強くなる為に里を離れ

修行に来ていた父と

偶然出会った

二人は互いに惹かれあい

生まれたのがノエム

8人姉妹の末っ子だ

生まれたときは

毛色にぎょっとされ

母は庇ってくれたが

集落からは奇異な目を向けられ

優しい姉達からは

時折不思議な目で見られ

祖母に預けられてからは

それはもう可愛がられ

大切に育てられた

主に回復魔法と体術を教わり

ナイトメアのお姉さんは

今思うと護衛につけられたのかも

真の護衛は陽炎さんなのだが・・


はたして白いまゆゆはどうなるのか





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る