八章 ◆どうしようもないくらい好き
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私と坪内さんが一緒に休んだことによって、今まで疑惑でしかなかった、
【あの二人は付き合っているらしい】
という真しやかな噂が一気に表に出てきた。
システム部門は男性が多いので、直接私に何かを言ってくることはない。
しかも、相手が坪内王子様なので、あいつなら仕方ないみたいな話になっているらしい。
イケメンで俺様態度な坪内さんに、あまり意見をする人はいないようだ。
そうでなくても主任という役職付きなので、ますます遠慮されている。
この、恐れを知らない新人くん以外は。
「坪内主任、秋山さんと付き合ってるんすか?」
しかも結構でっかい声で言う。
ちょっと。
私の席まで聞こえてきてるわよ。
わきまえろ、新人くん。
君のせいで、まわりからの視線が痛いっての。
びくびくして身を小さくしている私とは反対に、坪内さんは悪戯っぽい笑みで新人くんに問う。
「なに、お前秋山に気があるの?秋山は俺のだから渡さねぇよ。」
一瞬フロアがシーンとなった。
ちょおっ!
これ、みんなが聞いているやつ。
みんなが耳済ませてるやつだから。
あー、なんてことを言うんだ。
自席で頭を抱えた私を、斜め前の課長が静かに笑っていた。
課長、笑ってないで助けてよ。
坪内さんも、そんな勝ち誇ったような顔するな。
新人くん、覚えとけよ。
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