腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
一章 ◆仏と悪魔はアメとムチ
01
私、秋山日菜子の勤める課には仏と悪魔がいる。
仏は課長の飯田さん。
いつも穏やかで怒ったところを見たことがない。
その上頭がよくて説明も上手くて、人の話もきちんと聞いて理解してくれて。
とにかく尊敬できる上司だ。
私は飯田課長のことが好きで、一生ついていきます宣言をしている。
もちろん、仕事上の話だけど。
それに比べて私の直属の上司、坪内主任。
坪内さんは見た目王子様だ。
さらさらヘアに整った顔。
笑顔なんて胸を撃ち抜かれるくらいイケメン。
背も高いしスタイルもいいし、仕事もできるし。
落ちない女がいたら見てみたい。
いや、私は落ちてないけど。
だって彼は悪魔だから。
口が悪い、態度がでかい、腹黒い。
呆れるくらいに俺様。
なのに彼の元に配属される派遣社員は、皆彼に心を奪われ告白し、そして玉砕して辞めていく。
今まで何人女を泣かせてきたんだ。
罪作りなやつめ。
そんな感じで一向に坪内さんの補佐が定まらない。
みかねた課長が派遣を雇うのをやめて、社員であり課の庶務業務を担う私を、兼務ということで坪内さんの配下に置いた。
マジですかと思ったけど、課長が「秋山さんよろしくね」と優しい微笑みで言うから。
仏の言うことは絶対な私は、頑張りますと良い返事をしたわけだけど、実は少し後悔をしている。
「秋山、資料できてるか?」
「まだです。」
「早くしろよ。」
「うるさいですね。自分が忘れていたものを朝一で渡してきて昼までにやれとか、鬼ですか。」
「忘れていたわけじゃない。優先順位が低かっただけだ。秋山ならできるだろ。」
「はいはい、ちょっと黙っててください。」
こんな感じですごく雑だし、私の扱いも雑。
雑すぎて最初は私も少し傷ついたりした。
でも、上司だけど歳が近いということもあって何か吹っ切れて、強気で行くことに決めた。
私も彼を雑に扱うことで今のところ上手く仕事は回っている。
しかも彼は、私の負けず嫌いな上に褒められると伸びるという性格を見抜いたのか、わざと煽っては私の処理能力を上げてくる。
めちゃくちゃいやらしい。
そしてそれに乗せられてしまう自分が悔しい。
そんな私たちの仕事ぶりを見て、課長が「さすが秋山さん」と褒めてくれたので、仏を崇める私としては心癒され頑張れている。
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