ドラキュラさんのデメリットは拭えない

アリエッティ

第1話 ドラキュラさんの日常は生きにくい

「いらっしゃいませー..」

ノッケから覇気が無いとか思ったか?

仕方ないだろ、夜勤なんだから。

「ポイントカードお待ちですか?」

わかってるよ、突然本を開いたら深夜アニメみたいなサブタイトルで始まったなぁと思ってるんだろ?


「有難うございましたー..。」

俺、ドラキュラはこのドラッグストア『ドラッQ』で日々バイトに勤しんでいる。わかってるよ、説明から入るのベタだなぁとか思ってんだろ?

そこは察せよ。なんで夜勤かって?

そこも察せよ、俺ドラキュラよ?

「はぁっ..」

ドラッQなんて店名だが店長はサキュバス、まんまと騙された訳だ。

流石淫魔というだけあって殆ど店には顔を出さん、男を漁っては喰い漁っては喰い..なんか俺より忙しそうだな。

「あんな女何がいいんだか、俺はもっとがっしりとした日差しに強そうな奴が好きだがね。」

もう長らく太陽を見ていない。どんな色をしていたかも覚えていない。

「夜のトイレが怖いという奴がいるが俺は余程昼の雑踏の方が怖い。」

とにかく我々ドラキュラにはデメリットが多い。

にんにく、十字架、銀、日光。その点利点は牙が鋭く血が好物。

「なんだそれっ!」

割に合わん..確かに食費は格別に安いが多大なリスクとのバランスが余りにも取れない。食費の割に電気代は高いし。何せ普段光を浴びれないからな、ガンガンに部屋では照明を焚き狂っている。

「つまりプラマイ0にマイナスを足して結局マイナスという事だ。」

夜中に一人で誰に話しているのか、しかもドラッグストアで。薬屋に勤めているが身体はめちゃくちゃ弱い、免疫も無ければ耐性も無い。何せ主食が血だからな、最近じゃ人にも余り会えてないからトマトジュースばかりだ。


「会ったところで吸えないけどな、襲って首に噛み付くなど考えられん」

お陰でしょっちゅう病院通いだ、無駄に高い処方箋を貰ってる。なんで店の薬じゃ効かないんだ!

「いらっしゃいませー..。」

ここで客が来た、人じゃあ無いが。

「あっれ、無いな。

何処にあんのかなぁ...?」

「……」

河童か、何処を患うんだお前が?

水辺でキュウリを喰ってるだけだろ。

「確か、この辺に..あれ?

えっーと...」

「……」

なんだその顔、何を見ている?

「.......」

探せって事か。俺に、薬を探せってか

「…あった、これだ。」

見つかったか、レジに持ってこい。

会計はしてやる。

「いらっしゃいませ..」

深夜に河童と二人きりとはな、どこのラジオコーナーだ。

「ポイントカードはお持ちですか?」

「あっポイントカード..ちょっ。」

なんだ、慌ててサイフを探る程ポイントを貯めたいか、ガメツイ奴め。


「えっと確かここに...」

あーあーそんなに広げて、覗きこんでまぁ、頭の皿が丸見えに..。

「ぷっ!」

「……なんだよ?」「い、いえ。」

皿が割れている!

レジに置いたのは、軟膏か?

これで治すつもりなのか?

「ほら、カードみっけたよ。

ポイント付けろさっさと」

態度が急変した、そういうタイプか。

「素敵な、お皿ですね。」「あ?」

どうだ、柔なドラキュラじゃない。今日はなんだか行けそうな気がする!

「ちょっと待ってろ!」「はい?」

なんだなんだ、何をする。棚を漁って商品を足すか?

そんな事をしても我が糧にしかならんぞ、ふははは!

「これも下さい..。」「....!」

ニンニクエキスの栄養ドリンクだと!

コイツ、あからさまな宣戦布告だ。

「ポイントを二つ付けておきますね」

「有難うヒヒッ!」

正確には三つだ、俺の怒りポイントを含めてな。


「良い店だなぁ、また来るヨ!」

「有難う御座いましたー。」

「直ぐに来るよ、また直ぐにね!」

二度と来るなバカガッパ。

「あいつのデメリットは皿だけか!」

次来たら喉にバウムクーヘンをねじ込んでやる。

「そろそろ業務も終了か..。」

最後に来たのがあの嫌な客か、後味が悪過ぎるな。

「んっ?」

レジ台に何か置いてあるな。

パチンコ玉?

「あの河童、パチスロ狂いか。

..だから皿が割れるんだ。」

こんな小さな玉の為に金を使うか?

「...違和感を感じるな。」

指先に、鋭い痛みを感じる...はっ!


「これ、銀じゃん...。」

あのカッパアァアァッ!!

「次来たら肌に砂利を塗ってやる。」

軟膏買って帰らなきゃ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る