都内、半パニック

まさりん

第1話 秋葉原と有楽町にて

都心に用があり、それが、存外早く終わり。そのまま最低限の台風の備えをしようと思った。

秋葉原のヨドバシに行って、モバイルバッテリーと電池だけは確保しようと思った。


神田明神と湯島を歩き、参拝してから向かう。最後の最後、ソフマップのあたりで雨が降り出した。大丈夫だと思っていたが、雨雲に追いつかれた。


ヨドバシの一階にスマホ関連のアクセサリー売り場がある。モバイルバッテリーはそこに売られていた。同じことを考え、モバイルバッテリーを求める人がごった返していた。

第一候補のソーラーパネルつきのモバイルバッテリーはなさそうだった。店員を捕まえて聴くと、もうないそうだ。

昔と比べ、秋葉原の店員さんは人当たりが良くなった。昔はもっと太々しく、常連とそれ以外を分けるところがあり、話すたびにムカムカした。だから、聞かなくて済むように下調べを念入りにしたものだ。


さて、そこで普通のモバイルバッテリーを求めた。素早くアプリでビックカメラの在庫を調べるとどこもソーラーパネルつきは取り寄せになっていた。探しまわってもむだだと悟った。

電池を買うのを忘れたことに気づき、有楽町のビックカメラへ。そこでは、人々が争うように電池を買いあさっていた。じいさんがばあさんの手元から掠め取るように電池を取っているのを見て、すっかり覚めてしまった。

まあ、なんとかなるや、というモードに切り替わってしまった。最低限のモバイルバッテリーが買えたので、よしとしよう。電池はさっさと諦めた。

ラジオでジェーン・スーが「こういうときにこそパニックにならずに……」て言っていたが、現場見てないな、とかんじた。こういう場に来ればみな煽られる。仕方がない。NHKを見れば避難場所情報をエンドレスに流してる。他の番組でも、気象予報士の顔はひきつってる。煽られて当然だろう。


有楽町に来たのは、沖縄そばを沖縄土産のショップ、わしたで買いたかったからだ。

行ってみると、閑散としていた。大量にあった沖縄そば、ソーキ、あしてびち(あれをなんで表現すれば良いのかわからない。コラーゲンたっぷりの煮物)、沖縄そばのカップ。そーめんしりしり、お茶を買って帰った。

レジをしてくれたお姉さんが、妙に南国的な色気のある人だった。肉感的な容貌。少し上目づかいで覗き込むようにしっかりと私と目を合わせ、ニコリにすこしねっとりした視線を混ぜたような笑顔を浮かべる。中音よりすこし低めの声。どこをとっても色っぽい。

男なら自然と手を差し伸べたくなるだろう。しないけど。


帰って夜になって、かみさんと女にとってはそういうのがあるか、という話題になった。はにかみの笑顔だろうということになった。裕次郎の笑顔がそういうイメージなのだそうだ。そういうかわいさがある。


ここいらは、少々パニックで、水すらコンビニになかった。非常食にカロリーメイトを大量に買っといた。

こうなることを読んで、モバイルバッテリーを確保していたヨドバシは偉い。

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