巣立ちの時までに小鳥飼育の経験値をアップするべし

琉 紅

第1話 ピクピクと動く生物

「こんにちは!」


 僕と妻、中学生の娘からなる3人家族。生活する場所は3階建て建物の3階。


 2階は、ただの倉庫。この辺ではよく見かける2世帯住宅。


 1階には父が1人、母は病で他界した。


「昔のことだけど、けっこう、泣いた」


 たま~に、妹がオヤジの様子を見に来てくれるから安心だ。



 さて、さて、ちょっとした出来事を話します。これは実話をベースにしています。




  * * *



―――― 妻から聞いた話。



 娘と共に外階段を上がろうとした時、ふと彼女は足を止めて固まっていたと。足下には真っ赤で、ピクピクと動く生き物がいて、びっくりしたからだ。近くでみると右手の親指くらいの大きさだったと。


 左手に伸びている3メートル程の高さの木(オヤジが植えた)に巣を作ったメジロのひなだった。


 その一匹が真下に落下したらしい。まだ生まれて間もないのか、産毛もなく眼も開いていないようで、初めて鳥のヒナを見た娘にはグロテスクに映ったらしい。


「何か、動いていて、気持ちが悪かった」


 というのが、第一印象とのこと。


 妻は、急ぎ3階の部屋に上がり手袋をして戻った。そして、真上にあった元の巣に素早く戻したという。


 子供の頃、インコやオウムを10年以上も飼っていたらしく、更にヒナの扱いにも慣れていると。


『手から人間の臭いをその雛に付けたら、親から嫌われて、巣から追い出されるから……』


 と、確信を持ったように話す。


 鳥の飼育レベル、経験値は高そうだ。


 80~90ptを動物園の飼育プロ、研究所や大学の生物の教授並みだとすると、彼女は20~30pt位はありそうだ。ちなみに、僕は7ptかな。全くの0ptでは無い。小学生のころ、自宅で確かに雛を飼った記憶がある。スポイトのような物で、水分を含めた小さな粒のような食べ物を、雛の口先が開いたとき、喉の奥に流し込んだのを覚えている。レベルマックス100は、実在するかどうかは知らないが、『鳥の神様』『羽の生えたエンジェル』とした。



 さて、妻が話すには、その小さな巣には3匹ほど雛がいたと。元々その巣は、ハトのつがいが作り始めていた巣だったが、人通りが多いので、途中で放棄してしまったものだったと、後で知らされた。


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