【優秀賞】世界一可愛い娘が会いに来ましたよ!

月見秋水/MF文庫J編集部

●燈華ちゃんの日記●

10月13日 国際父娘デー

 皆さん、こんにちは! よくぞ来てくださいました!

 私、久遠くどう燈華とうか、十五歳です!

 おや? 皆様、私の事をご存知でない……? え? 世界一可愛い娘キャラなのに?

 あはは! それもそうですよね! だって私の登場するライトノベルは、十二月発売予定ですから!


 ちなみに……。


 まだ作品タイトルすら決まっていないそうですよ!


 タイトルも無い、イラストも無い……おおう、なんと絶望的な状況でしょうか。

 それでも何とかしてみせようじゃありませんか! ムスメリティの見せ所ですね!


 世界一可愛い娘こと私、久遠燈華とそのお父様が「愛」を見つける物語が本になって皆様に読んで頂く前に、私やお父様、他の女の子達の事をもっと知ってもらいたいです!


 さてさて、本日10月13日が【国際父娘デー】だそうですよ! 

 何という素晴らしい日でしょう! 皆さん知っていましたか?


 超直前で気付いた関係者の方々が、大慌てで準備を始めたそうですが……燈華ちゃんは良く出来た娘なので、そういう事情には突っ込まないようにします。

 

 いやあ、私とお父様の記念日は数多くありますが、まさかちゃんとした父娘の日があるとは、驚きですよね!


 あ、ちなみに私、この日はお父様とデートをしてきましたよ!

 とても楽しい一日で、お父様の娘愛に触れた素晴らしい一日でした。


 あれあれ? もしかして興味あります? 燈華ちゃんとお父様の記念日の様子!

 いいでしょう! では燈華ちゃんの日記を公開しちゃいましょうかね!


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 あ、嘘ですごめんなさい燈華ちゃんは安い女なので無料公開に決まっているじゃないですかブラウザの戻るボタンやスマホのホームボタンに手をかけないでください許して。


と、というわけで! 十月十三日の、私たち親子デートの様子をどうぞ!


―――――――――――――――――――――――――――――――――


 十月十三日(日曜日) 晴れ


 今日はお父様がお休みで家に居たので、おねだりしてカレーを作ってもらいました!

 久遠家秘伝のカレーは、レストランや給食のカレーとは違う味がして、私の大好物なのです。いつかレシピを教わろうと思っています。まあ私、料理出来ませんけどね!


「お父様。今日が何の日か知っていますか?」


 二人きり、リビングでカレーを食べ終えてから、ソファに座るお父様に尋ねてみました。

 お父様は私の問いに首を傾げ、食後のコーヒーを一口飲んでから答えます。


「いや、知らない……秋だから、体育の日か?」


「惜しい! それは明日ですね! 今日は国際父娘デーだそうですよ? ということはあれですね? お父様が可愛い娘に布状のやや高価な何かを買い与えるべきでは?」


 ふふふ。燈華ちゃんはおしとやかなレディーなので、あえて「某有名ブランドの高い冬用コートを買ってください!」とは言わないのです。出来た娘でしょう、私!


「あー……そうか。燈華も年ごろだしな! 一着くらい欲しいよな、勝負下着!」


「ち、ちち、違いますぅ! まだ勝負する機会がありませんっ!」


「あ、今『父』って言った? お父さんが好きだなあ、燈華は。あはは」


「何ですかこのドタコン(ドウター・コンプレックス)ファザーは! 言っていません! 普通にちょっといい新品の服を買って欲しいだけです!」


「ああ、そういうことか。でも何で新品指定? 遠慮しなくても買ってあげるなら古着とかじゃなくて、ちゃんと新品を買ってやるぞ」


「ほら、お父様ってたまにフリマアプリで中古の高い女子用制服とか買いますし」


「お父様にいきなり濡れ衣を着せるのは止めようね! 服だけにね! ハハハ! 買ってないからね? 本当だよ?」


 うーん。口から出まかせだったというのに、焦っているのが逆に怪しいですね……。

 お父様の部屋を漁ったら、出てこないですよね? 女子用制服。


「そ、それより燈華。どこの店に行こうか? 今日は久々にお父さんと二人で、駅前のショッピングセンターに行くか? あそこは色々な思い入れがあってだな? な?」


 お父様は額の汗を拭いながら私に尋ねます。何で汗を掻いているのでしょう? そんなに辛くなかったですよね、カレー。おかしいですね?


「そうですね。出来れば二人でウインドウショッピングをしながら色々見たいですね!」


「お。いいじゃないか。燈華との買い物は久々だし、俺もお洒落しないとな」


「じゃあお父様、まずはタブレットでブックマークにある通販サイトを開いてください」


「え? まさかのネットショッピング?」


「ええ! これが本当のウインドウショッピング、ですね! ふはは!」


「はい……言われた通り、新しいウインドウを開きましたよ……」


 高笑いする私を尻目に、お父様は酷く落胆しながらも洋服を選んでくれました。

 こうして、私とお父様の国際父娘デーは終わりました。

 お父様はお出かけを楽しみにしていたようですが、その後二人で一緒にゲームをしただけで、とても嬉しそうにしてくれたのでちょろ……助かりましたね。

 だけどお父様。これだけは忘れないで欲しいのです。



 私、久遠燈華は世界で一番お父様が好きな……あなたの愛娘ですからね!


―――――――――――――――――――――――――――――――――


 いかがでしたか? こういう感じでこれから色んなお話を皆様にお届け出来たらと思っています。まだまだ日記は残っていますからね!


 私とお父様、それから他の女の子たちはどんな子なのか。


 そして、この物語が最終的にどこに辿り着くのか。


 それをほんの少しでもお伝え出来たら、燈華ちゃんは大満足なのです!

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