第14話 徐々に見え始めた特殊性

 子供を御者席に乗せると転落の危険性があるため、サンテ達は荷台の荷物の隙間に入り込んだ。

 それでも初めて乗る馬車に興奮してほろのない後ろを眺めていたのだが……


「うえー、気持ち悪い……」


 これでもかと言うほど、乗り物酔いした。

 クヨフは街道脇に馬車を停止させ、サンテの回復を待っている。


「少し早いですが、今日はここで野営にしましょう」


 クヨフの宣言で冒険者達やサンテの仲間達、それぞれが野営の支度を始める。

 林で集めた枝を紅椿が器用に組み合わせ。

 疲れ知らずのガイが別の枝を持って、上空目がけて熱線を放ち点火する。

 その火を紅椿が大きくして、組んだ枝に燃え移らせていく。

 ラムは無音で移動が出来るので、遠くに見えた鳥の止まる木に狩りに出かけた。

 コスモスは道中作った糸玉を、クヨフに見せて一部の食料と交換交渉に成功させていた。


 指示命令させないと何も出来ないのかと思いきや、見事な連携を見せて野営の環境を整えていくサンテの仲間達。

 特に驚いたのが、ラムが鳥を三羽狩り。

 血抜き、羽抜き、解体までして持って帰ってきたことだ。

 冒険者には二羽、クヨフにも両の手羽と足が差し入れされた。

 中々大きな鳥だったので、一羽の胴部分だけでもサンテとゴブリンには多いくらいだったのだ。


「あっ、ありがとう」

「あっ、ありがとうございます」


 冒険者達もクヨフも呆気にとられ固まっていて、冒険者が一人、足に火が燃え移ってボヤ騒ぎになった。

 それもラムの放水により消火されたので、また全員が固まっていたのであった。




 すっかり日も暮れて食事も終わり、辺りを闇が包み始めた。

 二人教会送りになり残り七人になった冒険者は、交代で睡眠を取り合って夜の番をする。

 今起きているのはリーダーの青年と、舞をみせた片言の女性だ。

 そこにクヨフも参加して焚き火を囲んでいる。


「俺はもう、今日で大抵のことじゃ驚かなくなったと思う」

「ワタシもそうオマウわ」

「わたくしも激しく同意しますよ」


 音や気配に注意を払いつつも、この驚きの感情を共有したい。

 起きている三人の思いは一緒だった。


「わたくし今日初めて、サンテさんでテイマーを見ましたが、テイマーとはこれほどのものなのですか?噂にすら聞いたことがないなんておかしいくらいに、凄い能力じゃないですか」


 既に交代要員として寝ている冒険者に気付かい、大きな声は出さないが。

 クヨフはかなり興奮して、それを押さえつけながらリーダーに聞いてみる。


「いや、通常テイマーが従えられるのは一体か二体までで。稀に天才と呼ばれる人物が、三体目を従えられるらしい。俺達のパーティーが知っているテイマーは一体のみで、それも偵察しか出来ない小鳥だったよ」


「あのコジタイはフツウのコドモだけど。シタガっているリビングアーマーのガイは、まだソコがミえないわ」


 二人の解説に言葉も出なくなったクヨフ。

 自分がしたサンテへの対応に間違いはなかったと、善人に育ててくれた両親へと感謝したのであった。

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