第13話 ゴブリン・紅椿
「貴方の名前はリンゴでどうかな?」
「ギャギャー!」
サンテの名前の案に、ゴブリンは腕でバツ印を作り拒否を示している。
「ゴブリンだからリンゴって、いいと思ったんだけどなー」
サンテは何かヒントになるような物はないかと、首を回して周囲を見渡している。
そこで目にしたのは背の低い木に花咲く、美しい紅。
「決めた!ゴブリンさんの名前は紅椿!!」
「ギャギャーッ!!」
サンテの名付けが気に入ったのか、腕を頭の上にして丸を作って見せた後、先程の祝いの舞を披露してみせた。
「名前、気に入ってくれたんだね紅椿ちゃん」
「ギャーギャ」
「フフフフフフ」
「ギャギャー!」
サンテとゴブリン……紅椿が手と手を取り合って踊っている姿を、クヨフと冒険者達が真剣な眼差しで見つめている。
「これがテイムですか。いやはや、興味深いですねえ」
「そうですね、しかしクヨフさん。サンテちゃんもテイムを終えましたし、安全のためにも移動しましょう」
「おお、そうですね。そうしましょう」
冒険者のリーダーに返事をすると、クヨフは馬車の点検作業を開始し、安全に走れる状態であるかを確認する。
冒険者達は既にドロップアイテムも、仲間の残した服やアイテムも回収し終えて、馬車の周囲に立って警戒を強化している。
仲間の女性が踊っていた間も、交代で警戒していたのだから、おそらくは護衛になれたプロフェッショナルなのだろう。
そんな自分達でさえ仲間を失ったゴブリンの大集団相手に、一人で立ち向かい全滅させたガイ。
冒険者達は畏怖しそうになって、膝を抱えて座り込む姿を見て、ほっこりした。
「皆さん、馬車は無事でした、これから移動を再開します。サンテちゃん、馬車に乗っていくかい? ガイさんがいれば、護衛なんて必要ないだろうけど。私達と一緒なら、ガイさんが戦っている間のサンテちゃんを守れるからね。どうだい?」
「?????????」
「あー……ガイさんは、いかがでしょう?」
話しを円滑に進めるためにサンテではなく、話す相手をガイに変えるクヨフ。
コクリ。
ガイは一度頷いて、クヨフの提案を受け入れた。
「ありがとうございます。サンテちゃーん、馬車に乗ったことはあるかい? おじさんが近くの町まで乗せてってあげよう」
「ホント? わーい!」
クヨフの提案に両手を伸ばして喜ぶサンテ。
その姿は年齢相応で、あれほどの強さを誇るリビングアーマーを従えているとは思えない。
クヨフは町までの道中の安全を確信すると同時に、ガイが敵に回らないように、サンテを丁寧に扱おうと心に決めるのであった。
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