第9話 相応しい料理
サンテが目覚めると、知らない部屋でベッドに寝かされていた。
部屋の入口にはリビングアーマーのガイが。
テーブルの上には水差しとコップ。
それにスライムのラムと、見知らぬ蜘蛛が乗っていた。
「ガイさんラムちゃん、おはよう」
ガイはサムズアップ。
ラムは体を上や横に伸ばしてアピールしている。
「それで、この蜘蛛は? 新しいお友達?」
ピンポンピンポーン!
再びガイのサムズアップが繰り出され、音と重なる。
同時にラムも体の一部で丸印を作っている。
「そうなんだー。じゃあ、この子にも名前をあげないとね。君は男の子?」
フルフル。
蜘蛛は体を左右に揺らす。
「じゃあ、女の子?」
ピョンピョン!
今度は何も音が聞こえないが、蜘蛛の態度からして間違いなさそうだ。
「えっと、クモ子とかスパ子と」
ブンブンブンブン!
蜘蛛は全力で体を振って拒否している。
「えっと、じゃあ……お花の名前から取ってコスモスとか、どうかな?」
ピョンピョンピョンピョン!
蜘蛛は大喜びで飛び跳ねている。
「じゃあこれからあなたの名前はコスモスね。よろしく、コスモスちゃん」
その瞬間サンテに、コスモスと繋がった感覚があった。
「これで契約出来たね……プレゼント? なになにー?」
渡された物を見てサンテは赤面すると、毛布の中で着替えた。
直前まで身に着けていた布は自分で管理している。
(今日、絶対に袋とか買うんだから!)
サンテの決意は鋼よりも固いはずだ。
ギルドの制服を着たヘレンと合流して、ミックの働く酒場に向かう。
「ヘレンさん、昨日は私の分まで出してくれてありがとうございました。お礼に今日は、私がヘレンさんの分まで出します」
「あらそう? だったらご馳走になるわね?」
「うん! ……じゃなかった、はいっ!」
(やーん、サンテちゃん。可愛いー!)
萌えているヘレンの隣を、萌えさせたサンテが元気よく歩いていく。
狭い町なので目的地までは直ぐだった。
ヘレンがそれとなく誘導したので、サンテが迷子にならずにすんだのも一因である。
「あっ、若くて美しいヘレンねーさんと、本当に若いお嬢ちゃへぐぅ!!」
「ミックゥ〜? 今の、本当にってのが要らないと思うんだけどぉ〜? 教育? 教育する?」
常時一言多いミックに駆け寄ったヘレンに、昨夜同様口を掴まれるミック。
更には右の爪先を踏まれ、どこにも逃げられない。
初日で馴れたサンテはガイに持ち上げられ、カウンター席に座り注文している。
「おじちゃん、美味しいもの二人分ちょうだい!!」
「あいよぉ! ちょっと待ってな、直ぐ出来るからよっ! ……へい、おまち!!」
「おおーっ! はやーい!」
朝は大量調理済の料理を皿に盛るだけなので、メニューはセットのみで配膳がとても速い。
しかしそんな知識を持たないサンテには、新鮮な驚きに喜んだ。
「ヘレンさん、ヘレンさん。料理が来たよ、早く食べようよ!」
「あらそうね、じゃあ食べましょうか」
言葉責めされてグロッキーになったミックをその場に捨てて、ヘレンはサンテの隣に座る。
『いただきます』
(流石都会の料理ね。村と違ってとっても美味しいもの。ビッグになる私に相応しい料理だわ)
今後、相応しい料理が徐々に更新されていく事を。この時のサンテはまだ、知る由もなかった。
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