第245話ガラスの靴で踏んづけるその2
「──ぜぇや!」
大鎌による大振りの一撃をお見舞いしてやる……が、年増は地を這う様に伏せる事で避ける。
「まるでゴキブリ──いえ、フナムシね! みっともなくて貴女にお似合いよ!」
私の罵倒を聞き、分かりやすく青筋を立てながらもフナムシは獣の様に四肢のバネによって後方へと退避する。
「誰がフナムシか?!」
「アハ、自覚があったから怒ってたと思ったのだけれど?」
「挑発に乗るな! 《アシッド・ストーム》!」
「弟に庇われちゃって可愛い♡」
腐臭を放ちながら高波の様に迫り来る汚水を『八寒魔術』の《アヴィス・ブリザード》で一気に凍らせ、そのまま大鎌を振りかぶって刃とは反対側の
同じく『八寒魔術』の《悪鬼凍土》によって自身が凍らせた物質を支配下に置き、自在に操る事で毒で出来た氷の礫を二人に向けて回転と加速を加えながら飛ばす。
「ほらほらほらァ!! 一発でも食らうと毒になるわよ!!」
「《浸透撃破》!」
「『圧害』!」
フナムシ達の必死の抵抗が心地良いわね……奴らの背後にある街へと凍土を徐々に伸ばしていっているせいか、その対応に掛かりきりになる弟と上手く連携が取れてないのが滑稽だわ。
先ほどからジリジリと私の領域を伸ばし、同時にフナムシ女の肉を削いできた。
ある程度は回復されてしまうけれど、私の領域が彼らを包み込めばそれで終わりだから別に構わない。
「うふふ、どうするの? ねぇどうしちゃうの? 威勢が良かった割には全然ダメじゃない♡ 本当に可愛いわね♡ あっ、そこ触れちゃうと凍り付いちゃうわよ? って素直に振り向いたらダメよ? 凍り付いちゃうからって敵から目を逸らしちゃったらこうやって蹴られちゃうんだから♡」
「ぐっ、おのれぇ……」
ふふっ、最初に触れたせいで腕を一回切り落とすしかなくなったのがトラウマになっちゃったのかしら?
いいわよ、もっと無様に成り果てなさい? その様をちゃんと見ててあげるから。
「足掻いちゃって可愛い♡ ──どうせアナタ達はメレダイヤになれはしないのに」
私というメインストーンの輝きを最大限まで引き立てる、小粒ながらに綺麗な石にはなれないのだからただ見苦しいだけ。
所詮は噛ませ犬止まりなのよ、アンタ達程度では私を相対的に魅せるだけで引き立てられないのよ。
「ほら、素直に這いつくばって見せなさい? 踏んづけてあげるから」
せめて私の半身に見せるお手本の為に踏まれなさい。
自身に刃向かう者を嘲笑い、詰り、痛めつけ、晒し、踏みにじる……なぜそれが出来るかって?
決まってるじゃない、自らの自尊心を守るためよ。
「くっ、もはや老師に加勢する為に出し惜しみしている場合じゃないぞ!」
「クソっ、こんな小娘に……!」
「あらやだ、今さら本気を出すの? ……私を前にして全力を出さないなんて失礼にも程があるわ。それは侮辱よ」
決めたわ、コイツらはここで完膚なきまでに潰す。
「生意気な口をッ!! 『肉体昇華・海獣化生』ッ!!」
「『精神昇華・海獣化生』」
「『身体昇華・鏡海月光』ッ!!」
「『魂魄昇華・鏡海月光』」
「あらら、本当に醜くなっちゃって……」
まさか自らを化け物みたいな見た目にするとは思わなかったわね……まぁお似合いではあるけれど。
でも私みたいな美少女の相手がこれなのは画面映えしなくて残念だわ。
「海神の威光を思い知れッ!!」
「思い知ったところで貴女の魅力が上がる訳ではないわよ? ──『永久凍土・唯我独尊』」
ウツボとトカゲを足して二で割ったみたいな外見で迫り、伸びた爪を真っ直ぐに揃えての手刀を大鎌を回転させる事で弾く。
フナムシ女に隠れる様にして放たれる水弾などの魔術攻撃を凍らせる事で落とし、逆に吹雪を食らわせてやる。
「その年齢でそこまで堕ちているとは……もはや死でしか救えんな」
「当初思っていた以上に詰まらない男ね? まぁ私の誘いを断る時点でゴミ確定なんだけど──『肉体歌劇・美麗優美』」
左足で地面を思いっ切り踏み付け、そこを起点として一気に緋色の氷塊を出現させる事で二人の攻撃を同時に防ぎ、その直後に爆破させる。
爆発によって飛び散る氷片と一緒に前へと躍り出て、絶対零度の冷気を大鎌に纏わせて薙ぎ払う。
「がっ?!」
「ぐぅっ?!」
「『神気冒涜・傲慢女傑』」
モロに直撃を喰らって倒れ込む女と、女を突き抜けてそのまま飛来した冷気の斬撃に肩を切り裂かれ、そこから凍てつき始めた男を見て嘲笑する。
今さら本気を出したって遅いのよ、顔を合わせた時から既に私の冷気はアナタ達の体内を冷やし続けていたのだから。
身体が思う様に動かなくて当然よね?
「『神前宣告・
発動待機させておいた《フロスト・ローズ》によって、紅い氷の彫像で出来た茨によって負傷した二人を拘束する。
「『神前宣告・白馬を踏み倒すガラスの靴』」
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種族:魔人
名前:ブロッサムLv.101《+30》
カルマ値:-394《極悪》
クラス:氷の女帝 セカンドクラス:トップスター サードクラス:悪鬼
状態:
唯我独尊《STR上昇:特大・INT上昇:特大・人類種に対する与ダメージ上昇:極大・秩序に属する者に対する与ダメージ上昇:極大》
神前宣告:自由意志《STR上昇:極大・INT上昇:極大・人類種に対する与ダメージ:極大・自身よりもカルマ値が上であるほど与ダメージ上昇:極大・常時HP減少:3%/1s》
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五秒間しか──いえ、五秒間も動けない彼らを見下すのが愉しくて仕方がない。
「『
あーあ、蒼褪めちゃって無様ね。
ふふっ、何とか魔術によって生み出せた小さな盾も後ろの街に回さないといけないだなんて、本当に可哀想。
「『──
でもね、それがアナタ達の選択だから──甘んじて受け入れて?
「《
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「うっ、げぼぉっ……」
「気が付いた?」
地べたに這いつくばりながら咳き込む男に声を掛ける。
ボロボロで死にかけの身体を僅かに動かし、私の事を親の仇でも見るかの様に睨む様が心地好い。
「態度には気を付ける事ね、まだ死なせたくはないでしょ?」
「……っ?!」
氷で作った椅子に座りながら、フナムシ女の首を掴んで持ち上げる。
それだけで分かりやすく目の色を変えるんだから、面白くて仕方がないわね。
「いーい? 私は勝者で貴方は敗者なの、偉そうに登場しておいて何も良い所を見せないまま終わったゴミ虫なのよ」
「……」
「それでも姉の命くらいは助けたいでしょ?」
「……なに、が……望みだ……」
両足を切り落としたのにまだ割と元気がある様ね、そちらの方が好都合だから良いけれど。
「クスクス、そうね? まずは足を舐めて貰おうかしら?」
「……っ」
「私ね、これでも貴方にフラれた事がショックだったのよ?」
反対の手で口元を隠して笑いながら足を突き出す。
それだけで男が苦渋に顔を歪めるのが愉しくて堪らない。
「舐めれば、良いのか……」
「えぇそうよ、恥もプライドもなく一度は振った女の足を……秩序の戦士として混沌の足を舐めるのよ」
「……」
「嫌ならこの女を殺すだけよ」
「くっ……」
ゆっくりと、手で這いずりながら男の顔が私の足に近づいていく。
「……」
拳を握り締め、悔しさに顔を歪める彼の顔をじっと見詰める。
「くっ、すまん……」
一瞬の逡巡の後、そのまま舌を伸ばして私の足を舐めようとする男の顔を──思いっ切り蹴飛ばしてやる。
「ガっ?!」
「アハハハハ! 馬鹿ね! 話を聞いてなかったの?」
男の頭を勢いよく踏み付けながら笑い声を響かせる。
いつもこの瞬間が好きで好きで仕方がない。
「最初に誘いを掛けた時も言ったわよね? 触れる事は許さないって……それなのに一度は私の誘いを断り、無様に敗けた男が当初よりも優遇されるとでも思った? 本当にバカね?」
「ぐっ……」
「それに私、プライドのない男って大嫌いなのよね」
女の死体を投げ捨て、そのまま男の頭に乗せた足に力を込めていき──
「死んじゃえバーカ♥」
──氷のガラスで創った靴で男の頭を踏み潰す。
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