第144話遊び相手
「ぅあ……」
何処です? 何処に逃げました? ゴスロリ姿の少女とプレイヤーの皆さんが邪魔するせいで見逃して……あの女の子どもを見逃してしまいましたよ? 本当に余計なことをしてくれましたね……。私の周囲に倒れ伏すプレイヤー数人を見渡して心がざわつきます。
「ガァッアァァァァア!!」
踵に影で作った刃を生やし、呑気に寝転がるプレイヤーの一人の腹部を踏みつけます。……さて、最低限この方達の目的と背後関係を聞き出さなければなりませんね。
「さて、あなた方の目的はなんです? あの二人は何処に行きました?」
「は、話すから! 足を退けてくれぇ?!」
……それもそうですね、痛くて話すどころじゃなかったら仕方がないですもんね。とりあえず男性の腹部から足を退けます。
その時に踵の刃に
「ひっ……ひっ……」
「……いつまで悶えているんですか?」
未だに腹を抑えて悶絶している男性を見て身体が勝手に動き出し、男性の顔の真横を踏み砕く。……石畳が割れて飛んでくる礫とその破砕音に驚いたのか目を見開き、数瞬息を止めてからゆっくりと話し出します。
「……け、掲示板で各陣営の上位五名を狙ったイベントで──」
…………つまり掲示板であんか、ですか? とりあえずプレイヤー達が自主的にイベントを開催した、と……そして私を含めた方々がそれのターゲットにされてしまったようですね。
「……ふーん?」
「た、助けてくれ……」
大体の事情は把握しました。要はここで彼らを全滅させても次が、さらにそれを倒してもその次が攻めてくるのですね? ……そうですか、『遊んで』くれますか。
「私、今とても不機嫌だったんですよ……」
「あ、あぁ……?」
何が言いたいのか分からないといった顔をしている男性と、訝しげな表情を浮かべる周囲のプレイヤーを無視して話を続けます。
「憎くて仕方のない人が自分から向かって来たと云うのに……それを邪魔されてしまったんですよ」
「なにを……?」
せっかく今まで堪えて、堪えて、我慢してきたというのに……まさか自分たちから壊されに来るなんて、本当に驚きましたよ。子ども達は無実だとか関係ありません。私が、彼らを、憎んでいる……それだけで理由は十分です。
「あのゴスロリの……ブロッサムさんでしたか? とあなた方に」
「……」
せっかく愚かで、無知で、もはや可愛いとさえ思える人形が自ら歩いて……もうすぐでこの手に入るという段階で横から邪魔が入って失くしてしまいました。そのせいでとても……とてもとても不機嫌だったんです。
「でもですね? そんな邪魔者がまさか代わりの人形だとは思いませんでした」
「……俺たちが悪かった、謝る」
確かゴスロリのブロッサムさん? も狙われているんですよね? そして飛び入り参加もOK……ターゲットが参加してはいけないというルールも無し、反撃も可能。
「……この鬱憤を晴らすには丁度良いと思いませんか? いや、あなた方が原因の一つではありますけどね?」
「……すまない、申し訳なかった」
まぁ、八割は無防備に私の前に現れたあの小娘のせいですが……それでも、腹が立った事には変わりありません。ターゲットであるために、これから現れるプレイヤー達で『遊び』ながら、飛び入り参加枠としてブロッサムさんと双子を狙いましょう。
「事情も大して知らずに謝罪されても、仕方ないですし、求めてもいません」
「み、見逃してく──プギャッ?!」
あなた方に求めている役割は私の『遊び相手』ですよ? 詰まらない言動をする
「ヒッ……!」
彼だった物の首から上に咲いた華から足を上げれば、粘着質な音を立てながら桃色の物体と血液がブーツから垂れ流れます。……一拍置いてからリスポーンする様から視線を外しつつ、周囲に横たわる数人の方々へと意識を向けます。
「さてさて? 私にも景品って貰えるんですかね?」
「し、知らなグぃッ?!」
腰が抜けたのか、尻餅を突いた状態から中々起き上がれない男性の顎から下を蹴り潰しながら考えます。……そういえば、エルさんとも早めの再戦もできそうですね? それ以前に私がゴン……なんとかさんを倒しても特典とかあるんでしょうか?
「ブロッサムさんと、あなた方の両方を狙うことは確定ですが……」
「俺終わっ──ぶァっ?!」
壁を背に諦観を顔に浮かべた男性の頬を蹴り飛ばしてボールの様に飛んでいく頭部を最後まで見送らず、次の方に近付きます。とりあえずさっさと出来損ないを処理して、潰しにいかないといけませんね。
「課金アイテムとその場のノリに釣られるんじゃなかった……」
「え、そう? 俺はジェノサイダーちゃんに殺されるとか嬉しすぎるんだけど?」
「……お前ジェノラーかよ」
恐らくブロッサムさんを追えば必然的にあの双子とも再度かち合うでしょう。他のプレイヤーの方で『遊び』ながら『壊せる』なんて……今日は良い日だと、考え方を変えようではありませんか。
「特に最初の奴が羨ましい……ジェノサイダーちゃんの美脚で頭を踏まれるなん──」
「──死ね」
とりあえず一人だけ交じっていた害虫の首を刎ね飛ばしましょう……不愉快です。
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