第90話善悪攻守逆転

「攻めろ!」


「守りなさい!」


パーティーを組む仲間や従魔には劣りますがNPCの領軍の兵たちとレイドを組み、指揮系スキルの恩恵によって強化し指示を出すことで命令や統率系のスキルの効果も上乗せさせます。


「っ?! NPCの奴ら結構強いぞ?!」


「中身ギャングの領軍のはずでは?!」


さらに山田さんたちに全体付与や強化をしてもらいます。かける人数が多いほど効力は下がりますが無いよりはマシでしょう。


「HPが三割切ったものから下がりなさい! 一班から三班はそのまま前へ!」


「ジェノサイダーちゃん、指揮もできんのかよ!」


「負けてたまるか!」


当然彼らの中にも指揮系統スキルを持っている方もいるでしょうし、プレイヤーにとって付与や強化は基本ですからね……まず地力が違いますし数もこちらが圧倒的に不利です……なので。


「……全員渡した抗体は飲みましたね?! 投げますよ?!」


「『おう!』」


「なにする気──」


領軍全体に少ない時間のあいだに行き渡らせた抗体を、全員が飲んだことを確認してから鉄球をプレイヤーのど真ん中目掛けて投擲します。そこら中で爆発し、破片を周囲に飛び散らせながら一目で危ないとわかる色の煙と粘液を放出します。


「げぇっ?!」


「ジェノサイド・ポイズンだ!」


「一からどの解毒薬か魔術で解除できるのか調べろ!!」


…………なんですかジェノサイド・ポイズンって? 私の作製した毒ってそんな名前がついてるんですか? 初めて知りましたよ……多分ユウさんは知ってて黙ってましたね……後で引き回しましょう。


「ぎゃっ?!」


「ぐぇっ?!」


一先ず謎の名称のことは置いておいて、毒の解除を試み始めた者から投擲のヘッドショットで潰していきます……おそらく神官や薬師などのヒーラーでしょうからね。


「クソッタレ!」


「自然回復を待つのは……」


「いや、無理だろ? ジェノ毒だぞ?」


「だよなぁ……」


…………なるほど、ジェノサイド・ポイズンを略してジェノ毒とも言うんですね……どうでもいいですけど、気にはなりますね。微妙な気分になりつつも投擲して中心的人物とヒーラーを駆逐していきます。


「やっぱり指揮官を──がっ?!」


「ジェノサイダーを──ぐえっ?!」


「おい?!」


前線に掛かりきりになっている方から暗殺部隊が気配を消して『致命の一撃』を放っていきます……彼らが言うように領軍の中身はほぼギャングだったムーンライト・ファミリーです、それ故にこういった汚い仕事は得意なんですよ。


「汚ぇ!」


「感知能力高い奴は教えろ!」


「バカ野郎! ジェノサイダーに狙われるだろ?!」


まぁその通りなので惜しいですが……効果覿面ですね、こちらの策を封じたり目立った者から優先して投擲のヘッドショットを狙っていったので積極的な動きができないでいるようです。


「一班から三班は下がって、四班から六班は前に出なさい!」


こちらの策に対する対抗処置も反対が出て初動が遅れ、事態を打開しようと動けば目立って狙われる……それによって雁字搦めになったプレイヤーたちは数の差を活かすことができずに徐々に後退していきます。


「クソっ! 押されてるぞ!」


「わかってる!」


「別にここはこれでいい!」


「アイツらまだか?!」


どうやら何かを待っているようですね? まぁここはこれでいいというのは同感です、私もそう思います。彼らを観察しながら忍ばせた鋼糸を前衛のタンク職の足に巻き付けて引っ張ります。


「うぉっ?!」


「なんっ?!」


そのまま十数人のプレイヤーを空中に宙吊りにして首と手脚を鋼糸で巻き切ります。天井から鍋で野菜を炒めるような『ゴロゴロ』とした音と共に身体のパーツが落ち、一拍置いて血が壊れた水道管の如く噴き出します。


「全軍突撃!」


「『ウォォオオオ!!!』」


「ヒィッ!」


毒で弱り、目立たないように大技を出せず、積極性も欠け、不意打ちからの暗殺に怯えて所々の警戒などが疎かになっていた前衛のタンク職を処理すれば後は防御の薄い柔らかいプレイヤーたちしかいません……サブタンクや生き残りもいるでしょうが物の数になりませんね。


「報告! 敵正面から増援!」


「構いません、そのまま敵の戦力を釣り続けてください」


「了解!」


そうです……どんどん戦力を投入してください、出しみ惜しみなんてつまらないことしてないで、全力で来てくださいね? じゃないと面白くないですから……。


「……そろそろですかね?」


「報告! 裏口が突破されました!」


……来ましたか、一応裏口などはガチガチに固めてバリケードも作ってありましたが……まぁ時間がありませんでしたし、急造でしたからね……それと、別に計画通りなので構いません。


「裏口の部隊には徹底して遅滞戦闘に努めよと伝えてください。決して勝てそうでも攻めず、どんどん奥まで引き込んでください」


「へっ? あ……は、はい!」


さてさて、時間になるまでここで足止めと敵戦力を釣り続けることに努めさせましょう、裏口からはどんどんと引き込みましょう……あとはユウさんとマリアさんがどう動くかですね。


「……ふふ、楽しみにしてますよ?」


ここまでのサプライズをしてくれたんですから、次も期待してますからね?


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