第59話第一回公式イベント・四日目

「ひっ……いや、離して! 」


「あともう少しですからね、我慢してください」


先ほど殲滅したパーティーの生き残りの女性の長い髪を掴みズルズルと引き摺っていきます。この女性は動画配信者であり信者や囲い……でしたか? という者たちが多いようなので餌にします。


「みんな助けて! 」


しおらしく怯えている振りをしながら今も空中に浮かぶ妖精のようなカメラで動画配信を続けているのですからたくましい方ですね。そのおかげでポイントが向こうから来てくれるので助かりますから良いのですけど。


「あなたこんな事していいと思ってるの?! 同じ女の子でしょ! みんなと仲良くしましょうよ! 」


「……」


たまにこうやって噛み付いてくる余裕すらありますからね、素敵です。やはり新鮮で活きが良いのが最高ですよね。


「あなたぶぁっ、……も本当ヴァ、……みんなと仲良くしだぁ?、……いはずぶぉ……」


「そろそろ着きますよ〜」


まだ何かを言い募る彼女の口を指先でポンポン叩いて遊びながら移動していると目的地が見えてきましたね。…………大丈夫ですか? すごい形相ですよ? そんなに睨んで演技はもういいんですかね?


「さぁ、入りますよ」


「ひっ! 」


彼女の髪を掴んで引き摺りながら暗い山の中腹にある洞窟へと入っていきます、ここに来てやっと何をされるのか分からない恐怖を覚えたようですね。


「大丈夫ですよ、あなたには酷いことしませんからね」


「し、信じられるわけない! リスナーの皆さん早く助けて! 」


「そうですよ、早く来ないと暇つぶしに何かするかも知れませんよ」


「え……」


急かすように私もカメラに向かって微笑んでおきます、その時彼女の眉毛を片方だけ剃ったので呆然としちゃいましたけど計画に支障はありませんので良しとします。…………彼女の髪を掴んで引き摺りつつ奥へと移動しながら考えますが……最後に他のプレイヤーたちがマップに表示されてからどれくらい経ちましたかね? あの時から大分経ちますのでそろそろ追い付いていても​──


「居たぞ! 」

「こっちだ! 」


​──来ましたね。途中で追い付かれるかな? と心配していたぐらいですのに……大分遅かったですね? 疎らではなく纏まってきたので途中で合流することを優先したのでしょうか? まぁ、構いませんけど。


「は、早く助けて! 」


「待ってろメイルちゃん! 今俺たちが助けてやるからな! 」


「覚悟! ジェノサイ​──」


「​──《暗黒領域》」


彼らの大半が洞窟の奥まで来たところで影山さんたちの『暗黒魔術』でさらに闇を深め視界を奪うと共に闇系統の効力を高め、光系統の効力を下げる領域を展開します。


「気を付けろ! 」


「誰か視界補助のスキルか魔術を! 」


彼らがそれに対応する前にメイルさん…………でしたか? 彼女の長い髪を全て剃りあげます。


「……………………………………は? 」


その髪を使って彼ら囲いのリーダーらしき男性の首を締め上げ暗殺します……『不意打ち』や『暗殺術』のスキル判定が出たようであっさりと死にましたね。


「き、キャァァァァァアァァアア!!!!!」


「っ?! め、メイルちゃん!? 」


「大丈夫か?! 」


「彼女には酷いことしないんじゃなかったのか?! 」


………………失敬な。何も酷いことしていないではないですか……まぁ、いいです、彼女の悲鳴により混乱し纏める人物も居なくなった集団の中央を駆け抜け比較的冷静な人物から絞殺して音も無く処理していきます。


「どこだ?! 」


「いやぁあ! 私の髪がぁぁあ!! 」


「メイルちゃんすぐ行くよ! 」


纏める人物や冷静な方が居なくなればみんな我先にメイルさんに気に入られようと自分勝手な行動を起こしもはや烏合の衆ですね、こうなればもう後は簡単です。…………念のために毒ガスも炊いておきます。


「ゲホッ! なんだこれ……」


「! 毒だ! 」


この毒ガスには色が着いていますからね、この《暗黒領域》をなんとかできても視界は塞げるでしょう、そのまま隠密系統を全開にして洞窟から脱出します。


「…………それでは、さよならですね」


彼女を引き摺っていた時と集団の中央を駆け抜けていた時にばら蒔いていた爆薬が起爆し巨大な爆音と共に彼らを洞窟ごと生き埋めにします。


「念のために……《延焼》《微風》」


炎が燃え広がりやすいように補助魔術を掛けてから直ぐにその場を離れます。山の中腹で起こった大爆発と火事の影響で土砂崩れが起き、麓まで来ていた囲い第二陣の幾人かを巻き込んでいきます。


「思ってたよりも上手くいきましたね? 」


「ガっ!? 」


土砂崩れなどがある程度静まったところで反転し、生き残りを処理していきましょう。尻餅をついていた男性の首をサッカーボールのように蹴り飛ばし、呆然としている戦士の喉を引き裂き、逃げるプレイヤーの後頭部を鉄片の投擲によって貫きます。


「……粗方片付きましたかね? 」


少し確認してみましょう…………うわ、相当ポイントが稼げてますね? 人数が多かったのもありますが質が高い人も混じっていたようですね? もうイベントも半分を切りましたし、生き残りを探すのも大変ですね。


「ハン……ネスさんとユウさんは生き残っていますかね? 」


大丈夫だとは思いますけど、そろそろ会敵しませんかね?

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