第38話クレブスクルム解放戦線その4

「そこら辺に適当に腰掛けてくれ」


そう親父が言うと、あの女は素直に従い座る。後ろにいた小僧は戸惑いながらもそれに倣う。小さな姉妹たちは別の部屋で休んでもらっている。


「それで、話とは? 」


………………この女は本当に動じないな。普通知らない男に簡単には逃げられそうもないところに連れてこられたら、辺りを警戒するぐらいあってもいいのだがな?

むしろ我らの総司令である親父が、街の協力者でも解放してきた奴隷でもないこいつらを連れて歩いてるのを見て、仲間たちが遠巻きに見てたぐらいだ、情けない…………。


「うむ、薄々わかっておるとは思うが我らは反体制組織でな。奴隷たちの解放を目的としておる」


「それで私たちに協力してほしいと? 」


なぜこの女に協力を求めるのか、親父だって分かってるはずだ…………………………この女が混沌に属する者だということを。


「そうじゃ、反体制だの解放だの大仰なことを言っておるが、その実態は街に少ない協力者をつくり、ちまちまと逃亡奴隷や主人に反抗した奴隷を助ける程度。それも良くて1ヶ月に二、三人じゃ」


悔しいことに親父の言ってることは事実だ、俺の力が足りないばかりに未だ皆に我慢を強いている。


「今まで助けて我らの仲間になってくれた元奴隷たちもそれなりに戦力になるが、領主のもとには腕利きの用心棒が四人居てのう。一人二人なら馬鹿息子でも相手できるのだが、これが三人四人となると話にならん。こやつらを倒さねば領主も負けを認めんじゃろ」


そうだ、憎いことにあの裏切り者共は完全に領主の犬になった……真なる海神クレブスクルム様への信仰なども既に無かろう。できることならこの手で殺してやりたい…………!!


「じゃが、そこにお前さんが加わると話が違ってくる。後ろから少し見させてもらったが、息子が迂闊に手を出せない相手など、その四人が相手でも無い。察するに相当な実力者じゃろう」


「……女の近くに姉妹が居たから人質に取られると思っただけだ」


「よう言うわい」


…………ぐぐっ、確かに手を出せなかったの事実だが、戦えば絶対に負けん!!


「それでどうじゃ? お主が息子に加わってくれると、泥沼の内戦にならず可及的速やかに領主のいる本丸を落とせよう。陽動なら我ら元奴隷たちが請け負う」


「ふむ……」


そう言って女は考え込む。本当に底が知れん、いったい何を企んでいやがる……?


「無理にとは言わんがな、報酬も勿論用意する。どうか我らを助けてはくれんか? 」


そう言って親父は頭を下げる…………やりたくない、やりたくないが……親父が頭を下げてるんだ俺も下げよう。


「…………俺からも頼む」


▼▼▼▼▼▼▼


彼らから話を聞き、頭を下げられてお願いされます。


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クエストNo.番外

ワールドクエスト:クレブスクルム解放戦線

依頼者:ロン老師・ロノウェ

依頼内容:クレブスクルム戦闘員が街の各地で混乱を起こしている間にロノウェと一緒に領主館へ強襲、領主の凄腕の用心棒を撃破し体制を崩せ。

報酬:5レベル分のスキル含む経験値・100万G・真なる海神クレブスクルムの加護


注意:ワールドクエストはゲーム内のシナリオや今後に深く関わるクエストです。その成否に関わらず受け直すことも何度も受けることもできません。

受注しますか? Yes / No


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おや? 何気に初クエストですね、チュートリアルおじさんはクエスト受ける前に殺してしまいましたからね。しかもワールドクエスト……Noも番外になってますね。

なるほど、クエストの成否に関わらず結果は固定されてしまうんですね。ですが、元々そんなものなくても自主的に起こしていたものです。真なる海神クレブスクルムの加護というのも気になりますしYesで。


「わかりました、協力しましょう」


そう彼らに告げます。


「おお、そうか! それは助かる! 」


「……俺からも礼を言う」


相変わらずロノウェさんはこちらへの警戒を解かず無愛想ですね、一応お礼は言ってくれましたが……本当に私なにかしましたかね? そんなに殺気ぶつけられたのが嫌でした?


「それでは今日はもう遅いですし、部屋を準備させてますのでゆっくりしてくだされ」


「それではお言葉に甘えさせてもらいますね」


そう言って席を立ち部屋を出ていきます。


「…………全然話についていけなかった」


落ち込むユウさんを伴って準備された部屋に入った後は、今日はもうログアウトですね。

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