第21話アレクセイ・バーレンスその2

これは……中々に不味い状況と言えるでしょう。

近づくだけでスリップダメージがありそうな見た目してますし、迂闊に近づくのは悪手でしょうね…………。

まぁ超絶強化の代償にこの状態は30秒と少ししか持たな​──


「っ?! 」


​​──一瞬にして距離を詰められ左腕を斬り飛ばされてしまいました、全く前兆すら見えませんでした。

咄嗟にカウンターを放ち首筋を浅く切り裂くことはできましたが左腕を犠牲にしたにしてはしょっぱい結果ですね。


「ジィィィイヤァァァア!!! 」


…………この人大丈夫ですか? ちゃんと理性残ってます? 左腕を咥えて即座にその場から放れ毒煙玉を置き土産です。


「がァッ! 」


うわ、あの人突撃の衝撃で吹き飛ばしましたよ……これは、無理に倒そうとせず時間稼ぎや短縮を狙っていった方が良さそうです。


​──なので積極的に周りで佇んでいるプレイヤーたちの群れに突っ込みます。


「っ?! 」

「ちょっ!? 」

「ジェノサイダーちゃんマジ容赦ない……」

「散開しろ! 巻き込まれるぞ! 」


いいえ、逃がしません。退路を三田さんに《聖壁》と火薬玉の投擲、影山さんたちの《影縫い》で大体の足止めをします。

全員とは行きませんが大多数をその場に留め、積極的に盾にします。


「ググッ! 」


やはり読み通り部下の生き残りやプレイヤーたちまで巻き込まないだけの理性は残っていますね、まぁちゃんとした剣を振れているのですから理性がないとおかしいのですが…………。


プレイヤーたちを盾にしつつ自作ポーションで左腕をくっ付けます、三田さんの光魔術による回復と回復効果促進とリジェネ効果がつくポーションも追加で飲んでおきます…………ちゃんと動くようですね、良かったです。


「まったく困ったものです……」


逃げ回りながらあちこちに毒煙玉をばら撒いていきます。

最初からこっちが不利だったというのにこの超絶強化はないですよね、作戦通りにいくとよいのですが​──


「おい! 騎士のあんちゃん、俺たちプレ……渡り人は死んでも生き返る! 遠慮なくやれ! 」


「そうだ! 躊躇せずやれ! 」


「俺らごとやれ! 」


​──さらに不利になりましたね、余計なことを………。


「俺ごとやってくれ! へへっ、お前との冒険楽し​──」


「​──ジィッ!」


あ、ふざけてた方が巻き込まれてリスポーンしていきましたね…………って、悠長に観察してる場合ではありませんね、物凄い勢いでプレイヤーたちを巻き込みながら突っ込んできます。

火薬玉や毒煙玉を投擲して目くらまししつつ、大きく横に逸れます​──が腹を切り裂かれてしまいましたね。


「物凄い勢いでポーション類が消費されていく……調薬スキルを取得してて良かったですね」


盾にならないのならばせめて武器になれとばかりにプレイヤーを火薬玉などを仕込んで投擲します。

もちろん迎撃されますが関係ありません、1秒に満たないですが三田さんたちの魔術でも一瞬なら足止め出来ます、その間に出来るだけ距離を稼ぎつつまた投擲です。


「俺らがジェノサイダーちゃんの武器になっている件について」


「その前は盾にもなっていたし意外と優秀なのでは? 」


「最終兵器俺たち」


近づかれれば短刀でいなして、逸らし、受け流して凌いでいきます。

突進共に放たれる突きを刃をたて、半身になって躱し、急ブレーキからの振り返りの勢いを載せた薙ぎ払いを地面に伏せて回避し、その低い姿勢のままアキレス腱を切り付けます…………が効いてるのかイマイチわかりませんね。


「グガァッ! 」


っ! ヤバいです、ここに来てスピードが上がりました、こっちは戦場にいる人数が減って称号の効果が落ちているというのにこれでは​──


「はぁっ!! 」


​──刹那の瞬間に放たれる斬撃を気合いの咆哮を以って自身に活を入れ、半ば意地で受け流します。


「……ふぅふぅ」


腕が痺れますし息が切れてきました、あちこち切り裂かれながら耐えています。致命傷じゃなければいいやという感じですね。

もう持ちませんよまだですかね?


「シっ! 」


「ガァっ! 」


「フッ! ハッ! 」


「ググゥ! 」


突きで肩を、薙ぎ払いで腹を、振り下ろしで右腕を、逆袈裟で太ももを、回転斬りで頬を切り裂かれながら紙一重で弾き、逸らし、流して、避ける​──


「なるほど、これかヤムチャ視点」


「何してるのかまったくわかんねぇ」


​──が、左脚を斬り飛ばされてバランスを崩したところに突撃されます。


…………あぁ、これは避けられませんね、走馬灯のように鬼の形相をした騎士団長が突っ込んでくるのを眺めます。


これは私だけでなく井上さんたちまで死んでしまいそうですね…………。


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