第4話神をも畏れぬ所業
さてと、無事に神殿にリスポーンできたようです、なるほど綺麗ですね。中央にある像がこのゲーム世界に於ける秩序側の神、通称『七色の貴神』ですか……ととっ、ゆっくり観察している余裕はないですね、私がKILLしたプレイヤーで神殿中央はごった返しています。その混乱を鎮めるために今NPCの司教が自ら出張っています……丁度いいですね。
「な、なにがどうなって?! 」
私はさも何も知らぬ、たった今リスポーンした哀れな被害者の1人を装い駆け付けます──ちなみに偽装スキルを発動し髪の色を赤色に変更しています──そのままプレイヤーの中に紛れ込むことに成功します。
「皆さん落ち着いてください」
この神殿の司教ですね、始まりの街はそこそこ大きい街なようなので、司教クラスがトップのようです。冷静にこの混乱を鎮めようとしています。
「おそらく彼の者は混沌の使者でしょう、いずれ天罰が下ります」
「混沌の使者? やっぱりイベントやクエストの一環だったのか?」
「俺が知るわけねぇだろ」
「でも普通にプレイヤーっぽかったぞ? 」
混沌の使者とか随分な言われようですね、プレイヤーにも勘違いしてる人がいますし。まぁ、カルマ値は大分下がったみたいですし間違ってはいませんけど、詳しくは確認しないと分からないですが。
「しかしながら安心してください! 皆さんには秩序の祝福があります! この神殿に居る限り安全は約束されたも当然です!」
さて、どうでしょうね? まぁいいです、仕掛けも終わりましたし殺るとしますか。
「あ、アイツだ! 俺たちを殺した奴だ!」
そのまま偽装スキルで知らない人を私と同じ特徴に見せかけ、その人に向かって叫び周囲の意識を持っていきます。
「てめぇ! この野郎、どの面下げて来やがった!」
「待ってくれ! 俺じゃない!」
「うるせぇ!」
「皆さん落ち着いてください!」
一気に周囲の視線がその人に向き、騒ぎになります。司教は止めようとしてますが無理そうですね。
「殺せ殺せ!」
「やっちゃえ!」
面白がって煽る人まで出てきましたね、これで容易に収拾を付けられないでしょう……なのでその間に移動しそのまま──
「っ! 」
──新しく獲得した《致命の一撃》と《不意打ち》のスキルを発動して司教の心臓を貫きます。口から血を噴き出しながら倒れてくる直前に、司教が首から下げていたなにやら高そうなネックレスを奪い取ります。そのままプレイヤーの中に蹴飛ばしてから、祭壇に安置されていたなにやらご利益がありそうな神聖な雰囲気がある短剣を引っ掴みます。
その勢いのまま司教の付き人のシスターの首を落とし、プレイヤーの頭上を飛び越えて──その時についでに盗んでおいた油を撒き松明で火を付けます──神殿内を駆け抜けます。同じ場所に揉みくちゃになって混乱していたところのド真ん中に火を着けたので、『水魔術』を持っているプレイヤーが中々消火活動ができないようですね、そもそも火の着いた油に水はダメですよ。
「っ! あいつが本物だ!」
「火を付けやがったぞ!」
「捕らえろ!」
「お前ら邪魔だ!」
気付いた時にはもう出口間近、内部の騒ぎなど知らなかった門番の神殿騎士を不意打ちで即殺し、さっきとは反対方向の北側にある地下墳墓に向けて走り抜けます。
周り込んで道を塞ぐ衛兵NPCの人中を短剣の柄で殴りつけ、怯んだところで両腕を切り飛ばし、そのまま首を掴んで盾にします。
「貴様ァ! 」
鬼の形相で仲間の衛兵NPCが叫びますが、五月蝿いだけですね。これで後衛は手出しできません。肩に担ぐ要領でそのまま前進し、なんとか拘束しようと迫る相手のド真ん中に投げ入れます。
「っ! ハンス!」
おや? 腕なし衛兵はハンスという名前ですか……まさかモブのNPCまで名前があるんですか? そうなると愛着も罪悪感も……特に湧きませんね、残念です。
「貴様、楽に捕まると思うなよ?!」
「手足の1本や2本は覚悟しろ!」
それは貴方たちでは? 下手するとこの後後遺症でろくに食事もできなくなるかも知れませんよ? まぁ、NPCなのでわかりませんが……。
そのままハンス? さんに向けて松明を投擲、懐に仕込んでいた油袋が《投擲》の衝撃で破れ中身が撒き散らされ、そこに松明の火が着きます。
「わぁ?!」
「消せ! 消せ!」
一気に混乱した衛兵の内1人の襟首を引っ掴み、近くの木造住宅に投げ込みます。──もちろん火をつけて──そのまま捕縛から消火活動に移った衛兵の横を駆け抜け、火事の煙を目くらましに逃げ切ります。
《レベルが上がりました》
《スキルポイントを獲得しました》
《カルマ値が大幅に下降しました》
《新しく逃走スキルを獲得しました》
《新しく変声スキルを獲得しました》
《新しく変装スキルを獲得しました》
《偽装スキルのレベルが上がりました》
《短剣術スキルのレベルが上がりました》
《不意打ちスキルのレベルが上がりました》
《称号:神敵を獲得しました》
《称号:指名手配・始まりの街を獲得しました》
《称号:指名手配・神殿を獲得しました》
街の北にある墳墓に入ったことでまたログが溢れましたけど、後回しで。確認する前に急いで隠れられる場所を探さなくては。しばらくはここで潜伏ですね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます