第4話

 「よ、よろしくお願いします!」


意識が朦朧としているときには何事にも肯定的になるものなのであろうか?


あのとき私は見学に来ただけのはずなのに大きな電子機器をぶつけてくるような部員のいる部活に入部することを承諾してしまった……


「う~ん、すらっとしてて足は長く見えるけど身長は165㎝くらいかしらね、まあまだ1年だし伸びる可能性はあるか……」


「やっぱ種目やるならタッパのある選手ほしいっすよね!」


わけもわからず入部させられた私にいろいろと文句をつける部員と顧問、マジでなんなんだよ……!?


第一印象(は機械ぶつけられたことだが)が最悪だったのは言うまでもないことだった。


「ほかに1年が入ってくる予定はあんの?」


「どうだろうねぇ?」


「とりあえず新入部員が入ったことだし基本的なこと教えてあげなさいな!」


「はーい!!」


早速更衣室へ連れられて行くのだった……


「まずは剣の持ち方からだね」


「は、はい!」


剣を2本持ってきて一つを私に渡す。


「右利きだよね?」


「そうですけど……」


「こうやって親指と人差し指でしっかりつまむようにして他の指は軽く支えるぐらいの気持ちで」


「こ、こうですか……?」


「少し力入ってるかな、まあ最初だし仕方ないか」


剣を持ってきた倉庫から出ると体育館の隅で構え方を教えてもらうことになった。


「まず足だね、左足を右足に対して直角にして左足の左側の踵に右足の踵の後ろ端を置いて背筋を伸ばして立つ。」


「剣は剣先を下に向けて右腕を伸ばしておく、これがラッサンブレ、気を付けの姿勢ね」


「そこから剣先を目の高さにまで上げて足を肩幅と同じくらいに広げて少し腰を落とす、左手はバスケットボールを抱えるような感じでバランスを取るの」


「肘と脇はほぼくっつけておくか紙1枚分を挟んでいるような感じでね」


「これが構えの姿勢、オンガードって言われたらこういう状態になるの」


「こうでしょうか?」


ぎこちない姿勢にしか感じないが聞いてみる。


「う~ん、もうちょっと腰を落としてないと安定しないかなぁ、よしスクワットやってみよう!」


「スクワット……ですか……?」


その場で軽くヒンズースクワットをやってみた。


「それもスクワットなんだけどちょっと違うスクワットでね、フレクションっていうフェンシング式のスクワットだよ」


そう言うと先輩はさっき言っていたラッサンブレの姿勢でしゃがみ込み、そこからまた膝を伸ばして体を上げる動作を繰り返して見せた。


「その体勢からスクワットをするのをフレクションって言うんですね!」


「そうだよ、じゃあえーと……名前なんだっけ?」


「高木です!」


「高木……ならギータカちゃん同じようにやってみて!」


「あっはい!」


変なあだ名をつけられてしまったようだ……

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