第2話 グルタニカ王国使節団

 窓越しの日差しも暖かに、まどろみから覚醒させられる。


 って、今何時?

 ガバッと起きてベッドを抜け出そうとしたら、後ろから手が伸びてきて引きずり込まれそうになっている。

 なんだか、あらぬところに手が……。

「ん~。リナちゃん、どこに行くの?」

「どこ行くの? じゃないです。今日は」

 それでも頑張って抜け出そうとしていると、うなじにキスされた。

 無抵抗だったら、そのまま襲われてしまう。


「セドリック様。今日はグルタニカ王国の使節団の方から会談申し込まれてるでしょ?」

「昼からだろ~?」

 よし。サイドテーブルの時計ゲット。

 ボーっとした感じなのに、抱きしめたついでに胸揉んでるし。

 本能なの? もう。


「あと2時間なんですけどね」

 そう言って、私はセドリックに時計を見せた。

 セドリックはともかく、私の方はもう用意を始めないと間に合わない。

「え? マジ?」

 さすがのセドリックも覚醒したようだった。

 やれやれ。


「私、支度をしてもらってきますね」

 私はベッドを無事抜け出し、寝間着姿のまま隣の部屋に待機しているはずの侍女たちの所へ向かった。

 新婚だからのんびりイチャイチャしていたい気持ちはわかるよ。私もそうだから……。

 だけど公務の日くらいひかえて欲しい。


 

 現在、イングラデシア王国はめでたく、国王陛下の側近達が復帰してくれて、その子ども達は外交を中心とした国政には、あまり関わってはいなかった。

 王太子殿下が王太子妃と共に外交をするくらいで、後は内部の……とくに私達は軍部の組織改革を主にしている。

 何せ、結界が壊れかけるまで、全く外敵にさらされていなかった分、軍部が弱体化しまくっていたのである。


 今、イングラデシア王国には、とある国の使節団が来ている。

 グルタニカ王国という軍事大国である。

 近隣諸国との国交を地道に再会させてた矢先のことで、少し焦りがあるものの冷静にアボット侯爵達が対処していた。


 今日の会談は、先方からのたっての願いで私たちが呼ばれていた。

 いったい何の思惑があってのことだろうと思う。

 セドリックが騎士団の総指揮官であるクランベリー公爵の嫡男だからという事だろうか?


 正式な会談では無いので、王宮のテラスを借りたお茶会という形で進められることになっていた。

 その来客用のテラスで、セドリックと2人待っていたら、男性2人が侍女の先導で護衛と共にやってきた。

 護衛の中に、しれっとサイラスがいるのだけれど。


 相手国の男性は2人とも背が高く。少し肌の色が濃いように見える。

 黒い紙が光の加減で茶色っぽくも見える。日本で見慣れた髪の色だわ。

 使節団の人達はみんなこんな感じだという。


 姿が見えたところで、セドリックと私は立ちあがり、こちらに来るのを待った。

「初めまして。セドリック・クランベリーです。こちらは妻のリナです」

 セドリックの紹介と共に、私は礼を執った。

 失礼の無いようにしないと、相手は軍事大国の使節団。

 今、不興をかって戦争にでもなったら、どんな奇跡が起こっても勝てない。


「本日は貴重な時間を取って頂きありがとうございます。キース・シャーウッドです」

「マリユス・ニコラです」

 そう2人が挨拶をした後、型通り握手をした。

 私の方には、2人とも手の甲にキスの真似事をしていたけど。 

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