第107話 アランの部屋の警備と国王命令書2通

 アランの部屋にも同じようにして向かった。

 こちらは、クランベリー公の子飼いの隊長がいる近衛第3部隊を配置していった。

 王太子派だけれど、いざとなった時にはアラン達の助けになってくれるだろう。


 部屋を訪ねると中にはアランとフイリッシア。なんとレイモンド・ホールデンまでいた。フイリッシアがレイモンドにしがみついてるけど。

 どういうつもりで、一緒にいるのだろう。

 クランベリー公が私の後ろにいるのに気付いてレイモンドがいう。


「僕を拘束しますか? 今回の騒動は、ホールデン家が起こしたものだと気付いたのでしょう」

「レイモンド様は知らなかったのです。本当です」

 フイリッシアは、必死にしがみつこうとした手を、レイモンドから離されていた。

「僕は、大人しく貴方に従います。ですが、アラン王子殿下とその妹君は無関係です。ですから、この2人は見逃してください」

 まぁ、もしかしたらいるかもって思って三振り貰ってたんだけどね。

 クランベリー公、なんて言うかな。


「私はリナ嬢の護衛で付いてきてるだけだがな。今は、荷物持ちかな?」

 振り返ると、剣を2振り持ったままの……。

 やばい、クランベリー公を荷物持ち係にしてしまってた。


 アランが笑ってるのが見えるよ。

 とりあえず、レイモンドに剣を一振り渡す。

「お姫様を守るのでしょう? 頑張って下さいね」

「アラン王子殿下もどうぞ」

 と言って、最後の一振りを渡した。

「私も頑張りますけど、失敗したら2人でフイリッシア王女殿下を守って生き延びて下さいね」

「リナ、待って。失敗したらって」

 アランの問いに、笑顔で返して。

 ぺこんとお辞儀して部屋をでた。ジークフリートの時と同じ、臣下としての礼は執らなかった。


 私たちは次ぎに国王の執務室を目指した。

 命令書、手紙に書いているものが出来てればいいなと思って。



 国王の執務室には王様と父様がいた。なんかちょっとホッとする。

 アボット侯、ちゃんと仕事してくれたんだ。

「アボット侯の私兵に連れてきてもらったんだよ。そういう約束で、今まで動かずにいたのだからな」

「そうですか。良かったです、ご無事で」


「クランベリー公爵閣下。娘を頼みます」

 私の後ろにいたクランベリー公に父が礼を執っている。

「ポートフェン殿。貴殿に頼まれるまでも無いだろう。私にとってもリナ嬢は大切な娘だ」

 思わず、クランベリー公を見てしまった。

 いや……確かに、セドリックと結婚したらそうなんだけど。


「リナ嬢? 命令書2通だったかな。それと預かってた手紙だ」

 王様が取り残されてる。なんなんだ、この親父空間は。

「はい。ありがとうございます」

「同じものをもう国庫にしまってあるから、その命令書が破棄されても有効だからな」

「ありがとうございます。国王陛下。父の保護、よろしくお願いします」



 これで、サイラスに会いに行ける。

 あとは

「クランベ……あ……いえ、お父様。セドリック様は執務室にいると思いますか?」

 チラっとみる。少し赤くなってる?

 クランベリー公はゴホンと咳払いして

「いるんじゃないかな。リナ」

 おお、呼び捨てになったよ。ちょっと、嬉しい。

 こんな時なのに、不謹慎だな。


「では、お父様。先にセドリック様の所に行っててくれませんか。って言うか、セドリック様を動かないように部屋に留めておいてください」

「騎士団長に1人で会いに行くつもりかね」

「でないと、信頼は得られません。失敗したら、娘でいる資格無くなるかもですが……」

 クランベリー公は、切なそうに笑ってポンポンと私の頭をたたく。


「安心しろ。何があってもリナは私の娘だ」

 そう言って、足早に行ってしまった。

 なんか、優しいな。涙出そう。

 さて、気持ちを切り替えて

「ライラ、いる?」

「いますけどね」

 なんか、こっちも色々言いたそうだ。


「クリフォード様をセドリック様の執務室に呼び出して貰える?」

「私まで、引き離してどうするんですか」

「時間が無いの。サイラス様はこちら側に必ず引き入れるから……。執務室にいるのなら、こっち側に付いてくれるし、今回は交渉材料もあるの。お願い」

「……」

 ライラはだんまりで動かない。


「お願いします。動いてください」

 私は、ぺこんと頭を下げた。

 ライラは、はぁ~って長い溜息を吐いて、私に言う。

「私は貴女の駒ですからね」

 しぶしぶという感じで、ライラは私の前から気配を消した。

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