第106話 クランベリー公爵と王宮へ

 しばらく待っていたら、クランベリー公がやってきた。

「今回の王太子側の状況の事かな?」

「それは、もう情報が入ってます。でも、アボット侯爵は冤罪ですよね。今回狙われたのは私ですもの」

「そうなのかね?」


「お茶会の時、私とアラン王子殿下はテーブルをほぼ挟んだ位置に居ました。犯人が私とアラン王子殿下を間違うわけないです。むしろ、レイモンド様の方が似てますし。司令官の礼服を着て男装してたにしろ、カツラを被っていても髪の色は全く違います。そして、アボット侯爵様は私を狙わない」

「どうしてそう言える?」

「私を襲っても意味が無いことを知っているからです」

「どういうことかね?」


「すみません。国家機密にかかわるので、私の一存では言って良いのか判断できないんです」

 もしかしたら、これでクランベリー公の協力は得られなくなるかも知れないけど。

 そうなったら、この状態が続けば内乱に突入してしまう。

「お願いします。私に協力して下さい。海外からの侵入者がある以上、内乱は避けたいんです」


「リナ嬢。私は身内は裏切らないと言わなかったかね」

「ごめんなさい」

 しまった、信じてないと言ったも同然だ。どうしよう。

 クランベリー公は溜息をついて、下げっぱなしの私の頭を撫でた。

 な……なんで? 他人ひとを甘やかすような人じゃないでしょう?

「さて。ここにいても仕方ないな」

 子ども過ぎて見捨てられた?


「リナ嬢。司令官服に一人で着替えられるかね」

「あ……はい」

「では、馬の用をしてくるから着替えたら玄関ホールに来なさい」

「でも、ここを出たら。セドリックが護衛を現場処刑するって」

「護衛ごと連れて行く。早くしたまえ」

 バタバタ着替える。礼服から、色々なものを全て移した。

 下に降りると、一緒に来た護衛の人たちとクランベリー公が待っていた。

 今度は、私の馬も用意されてる。


「駆けれるかね」

「大丈夫です」

 私1人なら、さっきよりも速いはず。

 馬を操り重心を前にして全力疾走させた。



 王宮に着いたら、護衛達に私とクランベリー公の馬も任せ。

 私達は走って中に入っていく。

 まずは、近衛の詰め所。

 第1部隊から3部隊を引き連れて王族の私室がある奥にいく。途中、警備の近衛を王太子派に変えていきながら。

 指示を出したのは私だけど、後ろにクランベリー公がいるのでスムーズに指示が通る。

 

これで王太子の私室の警備は、第二王子過激派から王太子派に変えれた。

 第二王子過激派の近衛には待機を命じたので、三振り剣を借りる。

 エイリーンの私室を聞き出して護衛ごと、ジークフリートの所に連れて行った。

「王太子殿下。エイリーン様を頼みます。それと剣です」

 そう言ってジークフリートに一振り剣を渡す。


「リナ嬢?」

 ジークフリートは、少しクランベリー公を警戒している。

「あの……私、頑張りますけど。もしもの時は、その剣でエイリーン様を守って生き延びて下さい」

 それだけ言って、ぺこんと頭を下げて扉を閉めた。

 家臣では無く、友達としての言葉。だから、臣下の礼はとらなかった。

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