第68話 騎士団新人リナ・ポートフェン 宰相の執務室
結局、宰相に俵担ぐみたいにして執務室に連れて行かれてしまった。
ズボンはいてるから、気にしなくて良いけど、結構体勢的に辛い。
頭、ボーッとするし。
執務室には、セドリックもいた。
私はソファーにゆっくり降ろされる。
セドリックは私の状態を見るなり眉をひそめた。
「怪我をしたのか?」
「はい。すみません。剣受け損ねたときに、足首ひねっちゃて」
ごめんね。ふがいなくて。
「医務室で治療して貰ってるので、大丈夫でしょう。それよりこれは何ですか?」
宰相は、机の上から1枚の紙を持ってきた。
「辞令?」
渡された紙に辞令書って書いてたのでそのまま言ってしまった。
「そういう抗議は、近衛騎士団長に言って下さい」
セドリックも言う。まだ、
「抗議文は出してますし、直接抗議もしてきました。ですが、本人の同意を得てる、と言われたものはどうしようも無いのですよ。リナ様の言動は私には覆せません」
え……と? つまり。
騎士団の第5、第7、近衛騎士団第3部隊の指揮をする、司令官見習いに任ずるって事?
ああ、あれ公文書にしたんだ。
「クランベリー公と交渉したときのですね」
「何を交渉したんですか?」
「私が行動するときに、騎士団全てと貴族を抑えてて下さいって」
「交渉は成立したんですね、公文書がまわって来たって言うことは。それで? 貴女は司令官なんでしょう? なんで、騎士団の新人やっているんです?」
「このままでは、使い物にならないからですよ」
「騎士団が?」
「
「貴女が使い物にならないはず無いでしょう? クランベリー公とも渡り合える方が、何を言ってるんです」
渡り合ったって言っても、ずいぶん大甘にまけてくれたからなぁ。ギリギリ及第点ってとこ?
「信用してもらえませんからね。外部から来た子どもの、上から目線の命令に誰が従います?」
たとえ、軍隊がそういうものだとしても、人間の集団である限り不満が溜まる。
「信用ですか……では、貴女は私たちを信用できますか?」
コトンと目の前に小瓶が置かれた。
「これはデュークが貴女に飲ませたものと同じ液体が入ってます。今、ここで飲めますか?」
あの時と同じって事は、睡眠薬かぁ。私は宰相とセドリックを見た。
じっとこっちを見てるだけで、何の反応もしてないなぁ。まぁ良いか、この2人だし。
小瓶を手にとって、クイッと一口で飲んだ。元々、一口分しか無いしね。
「これで、良いですか?」
「え? ええ」
「うわっ、本当に飲みやがった」
って、飲むと思ってなかったんかい。
あ~、クラクラする。これ、強かったんだよなぁ。
「す……みま……せん。寝……」
最後まで言えなかった。お休みなさい。
「何にしろ、飲んでくれて良かったですね」
「あんまり、信用されても困るんだけど……な」
「でも、これで、一番辛い時期は眠って乗り越えられますよ。熱も上がって来てますし。奥の客間に連れて行ってあげて下さい。今度は悪さしてはダメですよ」
「しないって……」
なんて、眠ってからの宰相とセドリックの会話は、私の知らない話。
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