第55話 王宮の廊下 クリフォードからの苦言

 何度か、ジークフリートと連れだって王宮の書庫に通っていたら、クリフォード・アボットとばったり出会ってしまった。


 偶然では無いよねぇ。

 ジークフリートは、私とクリフォードとの間にさりげなく入ってくれる。

「何か用? クリフォード」

 ジークフリートが言うとスッと礼を執り

「クランベリー公爵がお待ちです」

「約束は無いけど?」

 ジークフリートが怪訝そうな顔になる。

 すると「失礼します」と言って、ジークフリートに耳打ちした。

 ジークフリートは、少し考え込む仕草をして、私に言ってきた。


「ごめんリナ嬢。例の件、私のところにまわってきたようだから、ちょっと会ってくる。クリフォード、リナ嬢を学園御用達の馬車まで送ってもらえないだろうか」

 今日の調べ物は中止かぁ。仕方ない。

うけたまわりました、王太子殿下」

 しかし、例の件って、セドリックの謹慎だろうか。

 確かに、思っていたより長い。こっちから宰相に打診した方が良いのかな。


「リナ様。あまりこんなことを言いたくは無いのですが。王太子殿下はお忙しい方です。学園に入学しても仕事量は減っていません。学園内と同じつもりでこちらにいらしてもらっては困ります」

「申し訳ございません。クリフォード様」

 叱られちゃった。確かに頼りきっちゃったものね。まぁ、謝罪は謝罪として……。王太子に対して耳打ちできる人間って限られるよね。

 やれやれ、クリフォードの前ではもう少しおバカな子どものふりしたかったんだけど。

 潮時だよね。ジークフリートに、こっちのツケまわして、そのままって訳にはいかないし。


「ライラ、いるんでしょ?」

「はい。おそばに」

 学園のメイド服のまま、跪いて礼執ってるよ。

 クリフォードがビックリしてるじゃん。絶対こいつ性格悪い。

「なんで王太子殿下のところに、こっちのツケがいってるのか、説明してくれる?」

「アボット伯の所為かと」

 そう言われて、クリフォードの方を見る。なるほど、私に釘を刺すために引き離したか。

 にしても、穏健派とはいえ第二王子派持ってくるか? 普通。


「ライラ。今、宰相様に会えるかしら」

「ご案内致します」

「参りましょう。次期宰相候補様」

 複雑な顔をしていたけど、否定は無い。とりあえず、私の後ろから付いてきた。

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