第47話 ホールデン侯爵家の夜会後 アランのお部屋で

「アラン~。誰がリナちゃんをホールデンの夜会に連れて行けって言ったかなぁ」

 あっ、セドリック、割とマジで怒ってる。

 どこで漏れたんだか、学園に帰ってきたらセドリックが待ち構えていて。


 今、男子寮のアランの部屋だ。王族特例って便利だね。

「ご……ごめんなさい。私が連れて行ってって言ったから」

 言い訳する私をアランが手で制した。

「リナのせいじゃないよ。ちょっと自分の目で確認したかった事があって、丁度良かったんだから……」

「確認したかった事って?」

「クラレンス・ポートフェンとの確執だよ。僕たちが生まれる前の、当時ホールデンって王太子派だったよね」

「ああ」

「まだ、尾を引いてるのかなって」

「で?」

 アランは、私の方をチラッと見て。

「尾を引いてるどころか……まだ」

「分かった。皆まで言うな」

 セドリックが止めた。私に気を遣ったのか。


 ホールデン侯爵に恨まれてる。

 父様が招待状を渡したのは、自分の目で見てこいってこと? 味方にするなら、その恨みごと取り込めと?

 現国王の就任時のゴタゴタの真相は王宮の人間でも数人しか知らないはず。

 でも、分かっていて処刑台に上がった一族がいたって事は全く漏れなかったわけでは無いってことなんだろうけど。

 どっちにしろ、ホールデンが当時宰相にでもなってない限り、真相は知らないはず。

 中途半端に噂でも流れた?


「ーで、リナちゃんは何か知ってるよね。俺らが知らないこと」

「知りませんよ」

 私としたことが、うっかりセドリックの前で考え込んでしまった。

「リナちゃん」

 少し強く呼ばれた。でも、これは絶対に言えない。リーン・ポートの話になるから。


「セドリック様だって、私に自分が知ってること言わないじゃない」

 つい、タメ口をきいてしまった。

 情報が足りないから、私が動いてしまうことをセドリックは理解してない。

 全てでなくとも必要な情報を持たせないと、守護対象を守り切ることなど出来ないということも。

 それに、私自身やらないといけないこともあるのだから。

 正直、前世代のことは現国王と父や宰相の間で解決して欲しい気もするけどね。


「俺がリナちゃんに言わないのと、リナちゃんが俺に言わないのは違うだろう?」

「私も、仕事として引き受けてる以上、守秘義務があるのですが」

 前世の仕事ビジネスモードで言ったら、セドリックがひるんだ。

「もし、全てを話さないと守れないというのでしたら、守ってもらわなくても結構です」

 私は、2人に礼をとり、部屋を後にした。


 こういうところが可愛くないんだろうな、私。

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