第46話 ホールデン侯爵家の夜会

 多分、今シーズン最後の夜会参加。私にとっては、だけど。


 リナ・ポートフェンは第二王子アランのエスコートの元、ホールデン侯爵家当主クレイグ・ホールデン主催の夜会に参加していた。


 バリバリの第二王子派。

 アランの元にホールデン侯爵が挨拶にやってきた。

 本来なら、来客側が主催者に挨拶をするのだが、今回はアランが王族なので、こちらの身分が勝っている。

 だから主催者が、自らやってきた。

 ホールデン侯爵は、中年だが、それなりに身体が締まっている、武闘派の家系なのだろうか。

 息子たちと同じ茶色の髪していて、一見、穏やかそうな紳士だ。


「本日は、ようこそお越し下さいました。アラン王子殿下」

「うん。招待されたのは僕じゃ無いけどね」

 アランの言葉にホールデン侯爵は、おや、という顔をしてこちらを見る。

「ポートフェン子爵のご令嬢でしたね」

「リナと申します。本日はお招き頂きまして、ありがとうございます」

 慌てて礼を執る。アラン~。紹介してよ、もう。


「クレイグ・ホールデンです。クレイグと呼んで下さってかまいませんよ。可愛いお嬢さん。招待を受けて下さって、ありがとうございます」

「しがない子爵の娘ですが……」

 なんか、引いてしまうくらい熱烈歓迎なんですけど……。

「ポートフェン子爵とは、一時期王宮では親しくしてもらっていてね。階級も我が家とは同列の扱いだったのですよ。ですから、気軽に声をかけて下さいね」

 と、ウインクをして行ってしまった。


「アラン様、どういう事か分かります?」

「さぁ」

 肩をすくめてる。この役立たず。

「あ……サイラスとレイモンドだ。お~い」

 手振ってるし。自由だな。

「アラン王子殿下。ようこそお越し下さいました。楽しまれてますでしょうか?」

 サイラスがきちんと礼を執って挨拶をしている。この前の気軽さは無い。

 そっか、王子殿下だったけ。


「うん。今日はリナのパートナーだけどね」

「リナ嬢。相変わらず……いえ、見る度にお美しくなられる。あっという間に、私たちの手の届かない存在になるのでしょうね」

 礼を執り、王子のパートナーとして褒め称えてくれる。っていうか、初対面のふりしないんだ。


「サイラス様、レイモンド様、お久しぶりでございます」

 サイラス様は、大人の笑顔で……営業スマイルともいう……返してくれたけど、レイモンドの方は、あまり歓迎してないみたい。顔に出ているよね、ものすごく。


「リナ、とりあえず踊る?」

「え? あ……はい。サイラス様、レイモンド様失礼致します」

 サイラスはひらひらと手を振ってくれた。

 曲が変わったので踊り出す。意外……ものすごくリードが上手だ。

「そういえば、ここの招待状、誰からまわってきたの?」

 踊りながら訊いてくる。

「父からですけど……」

「ふ~ん」

「何かあるんですか?」


「社交シーズン終わるから良いけど、あまり関わらない方が良いかもね」

「そうなんですか?」

「今日はとりあえず、この1曲終わったら帰ろうか。義理は果たしたし」

「あ……はい。分かりました」


 アランは、自分の派閥なのに妙によそよそしかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る