第26話 リネハン伯爵邸の夜会 派閥トップのご子息たち

「おめでとう、デューク」

「ありがとうございます、クリフォード様。よくお越し下さいました」

「ところで、こちらの可憐なお嬢さんは、君の?」

 おや、銀髪? 少し長めの。

 体格はしっかりしてる。やっぱり20才過ぎると胸板厚くなるよな。

 インテリ風で眼鏡が似合いそうな文官って感じなのに。

「いえいえ。クラスメイトに無理言ってお願いしたんですよ」

 おや? 紹介の仕方が違う……。


「では、紹介してもらっても?」

「はい。こちらはリナ・ポートフェン嬢です。クラレンス・ポートフェン子爵のご令嬢です」

 と先方に紹介してくれてから私に

「リナ嬢。こちらはクリフォード・アボット伯爵です。侯爵家のご嫡男ですよ」


 そうか、侯爵家の現当主がいるから自身は侯爵家が同時に持ってる伯爵の称号を一時的に名乗っているのか。

 成人男性は貴族の称号持たないと、王宮に出入り出来ないしね。

 いつまでも誰々の息子って名乗っているわけにはいかないし。

 なるほど、伯爵の称号所持者が多いわけだ。

 私は、ゆっくりと礼を執って挨拶した。


「リナ・ポートフェンでございます。お会いできて光栄ですわ」

「クリフォード・アボットです。こちらこそ、このような可愛らしいご令嬢とお会いできるとは思っておりませんでした。リナ嬢とお呼びしてもよろしいですか? 私のことは、クリフォードと気軽に呼んで下さい」

 と言って、手の甲にキスをくれた。お……おう。くらくらするよ。

 もう、この辺になったらゲームにも出てこないキャラだよな。


「よっ。おめでとうデューク。クリフォードばかりずるいなぁ。僕にも紹介してよ」

「サイラス様。レイモンド様」

 男性が2人やってきた。サイラスはいかにも騎士団所属っていうようなごつい体格してる。


 元々白いのが日焼けしたって感じで、髪も茶色なのにパサついてる気がする。

 レイモンドの方は見覚えがある。うちのクラスの子だ。

 サイラスをそのまま白く細くした感じ、少年体型だ。

 ああそっか、ジークフリートと一緒に居るから、見覚えがあるのか。


「兄さん、失礼だよ。まだお話ししてるのに」

「かまわないよ。相変わらず君のところは弟の方が礼儀正しいんだな」

「うるさいな。デューク紹介してくれ」

 デュークは、先ほどと同じように私を紹介してくれた。


「こちらはサイラス・ホールデン伯爵とレイモンド・ホールデン。こちらも同じく侯爵家のご子息方ですよ」

 私も先ほどと同じ挨拶をする。

 サイラスもクリフォードと同じような挨拶を返してきたので、可憐だ何だと褒め称えるのは令嬢に対する挨拶の常套句って思った方が良いな。

 うん、わかった。


「レイモンド・ホールデンです。って、同じクラスですよね。兄さん、リナ嬢は殿下方のお気に入りだから、あんまり失礼なことしない方が良いよ」

「失礼なことなどしてないだろう。お前の方が失礼だ。美しいご令嬢に対しての挨拶がなってない。すみません、不詳の弟で」

 言いながら、私に目線を合わせてくれる。


「あ……いえ。私も不慣れで……お気になさいませんように」

「おや、舞踏の曲が流れ出しましたね。最初はデュークと踊るとして、次は私とお願いできますか?」

 クリフォードが申し出てきた。

 この場合の令嬢の返事は「はい。喜んで」の一択だ。どっかの居酒屋さんみたいだな。

「じゃ、その次ぎ。俺たちね」

 予約制の何かか、私は。足踏んでも知らないからね。



 頑張った方だと思う。結構、踊った。デュークが引き取ってくれなかったらどうなってたことか。

「ごめんね。もっと早く声をかければ良かった」

「いいえ、そんなこと。私、お役目果たせてますでしょうか?」

「うん。充分だと思うよ。後はラストダンスまでゆっくりしてたら良いよ。はい」

 デュークは、シャンパングラスに入った飲み物を渡してくれる。


「アルコール入ってないからね」

「ありがとうございます」

 にっこり笑って受け取った。

 そして、ゆっくり飲んだ後、タオル地のハンカチを口に当てた。

 少しクラクラする。

 その場でゆっくり傾いた私の身体をデュークが支え、抱き上げたのが分かった。

 デュークが使用人に何か言ってるのを聞いたのが最後。


 私はそのまま気を失ってしまった。

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