第27話 リネハン伯爵邸の夜会 誘拐されてたエイリーン様

 気が付いた時には、ベッドの上にいた。ガバッと飛び起きる。

 あの時、口に含んだ液体は全てハンカチに出したのに……。

 飲んでしまってたら、絶対2~3日は寝てしまってた。

 薄暗い部屋の中。まだ夜? 日付変わって……とかじゃ無いよね。

 かすかに、ワルツ曲が聞こえる。ってことは、まだ夜会終わってない。


「リナ様。お目覚めになりました?」

 ビクッとなってしまった。誰もいないと思ってたから。

 暗がりに少しずつ目が慣れていって、窓明かりでも人の顔が確認できるようになった。

 え?

「マクレガー様?」

 あ……れ?なんでここに……。しかも、制服ですか。

「いい加減、エイリーンでいいわよ」

 いや、そんな場合じゃ無い気が……。

「エイリーン様も夜会にいらしてたのですか?」

 制服だからそんなはずは無いが。

「いいえ。私は昨日から閉じ込められてましたから」

 えらく冷静だ。さすが王太子殿下の婚約者……って違うか。


 だけど、まずいな。

 私は、わざと夜会で会場回りに警備が集中するこの日、さらわれるつもりで来たんだけど。

 エイリーンがいるのは想定外。

 私に、出来るだろうか。

 エイリーンの無事脱出と証拠書類奪還の両立。


「リナ様はどうして連れて来られたんですの?」

 どこまで答えて良いものか。

「屋敷内の物色をしょうと思いまして」

 何か違う気がするけど……。上手く言葉が選べない。

「え?」

「それ以上は、憶測になるので今は言いたくないです。とりあえず、ついてきてくれたら嬉しい……と思います」

 社会人になったとき憶測で物言うなって散々怒られたものね。


「まぁ、冒険ですのね。お供しますわ」

 とりあえず、乗り気になってくれて良かった。

 なんか、嬉しそうだな。

「エイリーン様、私の言うこと絶対聞いて下さいね」

 一応念を押す。

「分かったわ。守られるのは得意よ」

 なるほど、お姫様らしい返答だ。


 とりあえず場所の確認。窓の横に背を向けて壁にピッタリくっつく。

 顔だけ横を向けて外の様子をうかがい見る。

 完全に刑事ドラマのまねである。

 2階……と言うことは、家族のプライベートゾーンか。

 下でかがり火焚いてるからか、夜でも室内が少し明るい。


 事前にセドリックと確認した見取り図を思い出す。

 2階の右端の方に、当主の執務室があったはずだ。

 ランプ付けたらまずいよな。外から丸見え。警備兵とかいるだろうし。

「ここ、デューク様の妹君いもうとぎみのお部屋みたいなのよね」

 ぽつんと、エイリーンがつぶやく。


「そうなんですか?」

「だって、クローゼットにたくさん衣装ありますでしょう?」

 と言って開けて見せてくれた。

 確かに、夫人が着るには若すぎる感じの衣装が並んでる。

 デュークとの会話から、幼い子をイメージしてたんだけど……。

 でもまぁ、助かる。着替えさせてもらおう。

 

夜会服ドレスで徘徊するなんて無謀だ。

 無断拝借だけど、夜会服ドレスと交換って事で良いよね。

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