第7話 セドリック側 セドリックと第二王子アラン

「いやぁ~、参った。まさかいじめられてる令嬢を助けに入ろうとして、逆に令嬢たちをけしかけられるとは思わなかったよ」

 そういうアランの制服は少し綻びてる気がする。

 いつの時代も肉食系女子のパワーは凄まじいらしい。


「社交シーズン、始まってすぐのデビュタントが終わったら、寄って来なくなると思いますよ」

「そりゃ、そうだろうけどさ。ジークはその点、寄ってくる令嬢たちを上手く使ってるよな。一緒に連れて来させてるんだから」

 上手くいってない気がするけどな。途中で逃げられてるし。


 でも、お互い狙いは同じか……リナ・ポートフェンを取り込んで、頭の切れるアルフレッドを……先々はポートフェン家当主を自陣営側として王宮復帰させる。

 ポートフェン家が末娘を溺愛してるのは有名な話だ。彼女さえ押さえてしまえば、後は思いのままと思っていた。



 だいたい、あのリナ・ポートフェン。夜会の時の無防備さはどこにいったんだ。

 ホイホイ王太子の言いなりにパートナーになったときは、田舎者の世間知らずでバカな子爵令嬢と思っていたのに。


 今日もそんな感じで退席してたから、アルフレッドとの取引材料にしようと、わざとぶつかって、言質とろうとしたら。

 無言で返しやがった。少し震えてたのは、俺の立場を感じ取ったからか。一瞬で下心を見透かされた気がした。


 なんなんだ。

 アルフレッドの背にかばわれても、このままではアルフレッドの立場が悪くなると分かると、さっさと出てきた。

 相変わらず手は震えてるのに、態度は堂々と、笑顔を武器に声すら震えを感じさせなかった。


 あの洞察力、あの冷静な判断、態度。

 あれで、デビュタントも終わってない子ども……だと? 冗談もいい加減にして欲しい。

 手強い。こっちの陣営に欲しい。取り込めるだろうか、俺に。


「無理だと思うな」

 アレンがこちらの思考を読むように言ってくる。

「だって、アルフレッドからも振られっぱなしじゃないか。妹のこととなると本人だけじゃ無く、アルフレッドも必死で守ってくると思うよ」

 正論だ……一般論として。でも……。


「まぁ、適当にね。先は長いんだし。僕は兄さんの補佐が出来れば、それが一番良いと思ってるんだから」

 現状じゃ、それが一番難しいんだけどね。


 一般論的に、おとなしく守られている子どもなら、苦労しないんだけどな。

 現状、アルフレッドはどちらの派閥にも興味ないように見えるけど、リナの方はどうかな。

 あの家が、ただの子爵家なら放っておかれたんだろうけど……。


 ただ、リナに関しては、今、適当にしてたら、先々はもっと手に負えなくなる気がする。

 俺は、深いため息をついた。

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