W.B.G2012 防衛者
むつぎはじめ
前編
午前0時24分。12月x日。K県F県県境付近山中。日本国。
派遣された【対策部隊】三班24名は、私を除いて全滅した。
――半刻前。
【オブジェクト】……一般ではブラックゲートと呼称される不明物体が既に二基領内に存在している日本に、どういった理由か三基目が発生した。計算システムへのアクセス規制は条約で禁止されているが、不測のアドバンテージを与えるのは不都合である。
そう私の国は決定し、私達が送り込まれた。破壊という単純な指令のもとに。
輸送訓練機から途中下車してたどり着いた、肌寒いのにジメジメとした山中。ぽっかりと円形に切り取られた山肌。その真中にある黒い立方体。
「トーフ、似てない? めちゃくちゃ大きくて黒いトーフ。故郷の街の日本食ストアで見ただけだけど」
「そうねえ、見えなくもないけど、角の立った直方体ならなんでもそうなるんじゃないかしら」
そうかもしれない。バディのカルラの言葉に私は深くうなずく。
「設置完了。同体積のコンクリートに使う4倍の爆薬だ。吹っ飛ぶだろ」
しっとりとした彼女の声にうっとりとしていると、爆破組のテスがそう独り言ちた。私は小銃を持ってぼんやり空を見る。テスに相槌? しないよ。
『了解。隊員は退避せよ――』
じっじっじっじっ
オペレーターの言葉を遮る、神経を鋸引くようなざらついた音に、眉をしかめながら視線を落とす。
『――【オブジェクト】周囲、すり鉢状に沈降。高エネルギー反応! こちらからは把握できない。目視で状況を報告しろ』
ああ、見ているさ。黒い雷光が【オブジェクト】から放射され、撫でられた地面や囲んでいた指向性破砕爆弾<ブラスト・ボム>が”消失”してゆく。黒い光ってなんだよ。目が痛いじゃないか。
そしてその黒い光が凝集したかと思うと、いやに真っ白な、昆虫じみた、人と同じ大きさの……なんだ? これは。
「アラクネ……」通信組のメガネ……名前忘れた……が呟いた。「BGのエネミーだよ。ボクはさっきあの中で倒してきたばかりだ」はあ?
キチキチキチキチキチ
耳障りな擦過音を響かせると、そのアラクネは足元を爆発させたように跳ね跳び、メガネの鎖骨から上を抉り取っていった。
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