第21話 フラッグを狙え!

 相手は丘の上で旗を立てていたが、死亡で退場したのが4人、攻撃を喰らっているのが3人いた。

「ほう。そっちは全員無傷?一体どんな手を使ったんだ?」

「フフン。秘密や」

「興味深い」

「・・・隊長。ちょっと偉そうに、何か見栄きって、ほら」

「ええ?そう言われてもなあ」

「チッ。腕組みして。そう。

 会いたかったよ、ヤマトーーじゃない、騎士団の諸君」

 作り声で菜子がアテレコしてみる。

「反応なしかい!」

「うわ、ダダ滑りやん!」

「残り時間は10分か。このままやったら、人数の多く残ってるこっちの勝ちやな」

「させると思うか?」

 敵の無傷の男が、そう言って笑い、いきなり突進して来た。

 その剣と打ち合うのは、ルウム兄だ。ルウム弟は、サポートの隙を窺っている。

「行けえ!」

 2番目に強そうなのは、ジーンが受け、ミスラがサブに付いた。皆練習用の模擬刀だが、迫力は本物だ。

 この敵2人は本当に強そうだ。

 残る2人も、他の2人に比べると普通という感じだが、十分強いのはわかる。

「卑怯な手はもう使えないし」

「ロレイン、卑怯ちゃう。頭脳プレイや」

「ようし。私が突っ込んで来よう」

「待て、待て、待て。

 そやなあ。皆向こうは剣か」

「何か、浮かんだんか、真矢」

「まあな。

 ロレイン。飛び道具はあかんでも、飛ぶんはかまへんよな」

「え?そりゃあ、ジャンプは禁止じゃないけど?」

「じゃあな」

 ゴニョゴニョゴニョ。

「わかった。行こか」

「では。

 特務隊三連星!ガンダムネタ!」

 こちらに近い方の敵に、向く。そして徐にロレインはしゃがむと、手のひらの上に菜子を乗せ、そちらにぶん投げた。

 ひらひらと上着の裾を広げながら菜子が飛んで行く。

「隊長をいじめる悪い人」

 敵は剣を突き出して来るが、菜子が十手でガッチリと挟んで動かせない。

 と、その後ろから近付いていた真矢が、血のりをドパアッと垂らして笑う。

「ゲッ!?」

 流石にびっくりしたらしい。

「赤いのは性能が3倍やねん」

 攻撃を3発入れると、敵は瀕死になった。

 そこへ、フードを被ったレスリが迫る。

「死ぬぜえ。俺を見た者は、皆死ぬぜえ!」

「うぎゃああ!!」

 そして、そいつは死んだ。

「よっしゃあ!」

 レスリも嬉しそうだ。

「レスリにしては長いセリフやのに、ようやった!」

 敵2人とやり合う4人は善戦しているようだが、 どうも、隊長の相手のボスっぽいのが強そうだ。

「旗、取ろか」

 敵の旗の方を見ると、そいつはもう瀕死で、一発でアウトになりそうだ。

「ロレイン、やっちゃって」

「おお!」

「--!」

 ロレインは嬉々として突撃して行った。

「とったどーっ!!」

 そして、終了のサイレンが鳴る。

「まさかの伏兵だったな」

 苦笑しながら、ボスっぽい人とジーンが握手をした。

 そして、特務隊のメンバーは、王子の前に並んだ。

「おめでとう。

 いやあ、何て言うか・・・物凄く馴染んで生き生きとしてたね。逞しいねえ、異世界の、日本人は」

「はあ。どうも・・・」

 ジーンは困ったような顔をしている。

 そこで、言っておく。

「日本人がというより、大阪人やからとちゃうかな」

「大阪のおばちゃんは、世界最強のリーサルウェポンやからなあ」

「あはははは!」

 トレイス王子は朗らかに笑いだした。



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