第10話 初戦闘
鼻眼鏡を外して、しまう。
「目の前におるのに、いらんやろ」
「油断を誘えるかも知れんで」
「ふざけるな、いうて怒られるかも知れんやん」
「まあな」
そして、ひらパー印の模擬刀と十手を持つ。
「無理はするなよ。取り敢えず今日は俺がつく。無理そうなら俺が手を貸すから、ケガをしないようにするのを優先させろ」
ジーンが言い、2人は力強く頷いて、ジーンの後ろについた。
「頼る気満々か!」
ジーンの突っ込みが、上達していっている気がした。
本日の魔物は5体。町はずれの畑に沸いていたのを発見された。
「行くぞ」
「はい!」
隊員達は、気を引き締めて躍りかかって行った。
まずは訓練通り、刀で斬りかかり、すぐに距離をとる。離れるのと同時に、別方向から十手が延び、魔物の伸ばした腕の先、指を2本の棒の間に挟んでねじる。
すると、それだけで魔物は体勢を崩してしまうので、そこを、ばっさりとやって、殺す。
人間の急所、反応、そういうものを熟知している真矢と菜子の強みだ。大したことのない労力で、済ます。
ただ難点は、相手が多いとか、指が太いとか、もっと早いとか、そういう時だが、魔物がこのグレイもどきである以上は、まあ、有効だと真矢も菜子も考えていた。
「やったか?」
「アカン。それ、フラグや」
「ああ、そうか。じゃあ、ええと、またつまらぬものを斬ってしまった」
「・・・どうなんやろ・・・」
「・・・まあ、動かんからええやろ」
真矢と菜子は恐る恐る魔物の死体を覗き込んで言った。
「こう、意思疎通できひんもんって、怖ない?例えばゴキブリ」
「あれな。動かんから死んだんかな、思って近付いたら、いきなり飛び掛かって来たりな」
「反則やわあ」
「死体を片付けるタイミングに悩むわあ」
言いながら死体を突つき、間違いなく死んだと確信して気が緩む。
「構造とか知りたいな」
「持って帰って解剖しようや」
「宇宙人の解剖やな」
「動画撮ろ。
ああ。ネットにアップしたら、間違いなく人気ユーチューバーやったのに」
「1発じゃなあ。それに、『どうせガセや』とか思われて、アカンかったかも」
「そうかなあ」
「あれ?そう言えば、
荷物を探る2人に、ジーンが言う。
「無いぞ。魔物は、発生もその瞬間が謎だが、死んでからも少ししたら死体が消えるから、もう全てが謎だ。持って帰って解剖なんて、できないんだ」
2人は衝撃を受けた。
「何やて?解剖図とか無いんは、機密文書なんかと思っとったのに」
「不明なん?」
足元の死体を見た。
「・・・現場でやらんかったんですか」
「そんな危険な事、引き受ける医者はいない」
ジーンが答える。
「生かしたまま捕まえて、調べるとか」
「1度やりかけたら、仲間が殺到して大変な惨事になりかけたらしい」
2人は顔を見合わせ、重々しく頷いた。
「じゃあ、この場でやるしかあらへんな」
「2人おったら、何とかなるやろ」
「え、おいーー」
「隊長もいてくれてはるし」
「今度は解剖の準備して来んで」
「死にたての遺体は解剖した事あらへんな」
「生やな、生」
ジーンはそれを聞きながら、
「お前らが言うと、焼肉の話か何かに聞こえるな」
と嘆息した。
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