夏かし、ゆめウツつ

@shiz_non

閑話(1)

 またね、絶対だよ。

 約束したからね。


 淡く、限りなく透明で、いつ消えてしまってもおかしくない記憶。

 いや、事実忘れていたんだ。

 忘れて、そして今も思い出せないでいるその約束は、その夏の思い出ごとどこかへ置き忘れてしまっていたにも関わらず、今になって朧気ながらも記憶の奥の底の底から微かな気泡となって心の中を揺らし始める。

 約束という言葉だけが浮き上がり、感情を揺すっては波紋のように広がり、懐かしさと悲しさと、何かの焦りが感情を満たしていく。

 やがてその感情は全身を蝕み、あの場所へと足を進めるまでに至った。


 知らない方がいい、と自分の中の何かが警告する。

 それでももう戻れない。

 抗えないほどの強烈な好奇心と不思議な義務感は、赤信号をノーブレーキで突き進むかのように加速を手伝う。


 約束、だからな。

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