ミライニサチアレ
手田リュウ
プロローグ 佐久間幸太という男
ジリリリリ......
『近年増加傾向にある捨て子を保護する団体が...』
テレビを消し、寝室でスーツに着替えてから家を出た。
駅を乗り継いで約1時間。着いたのは全国でも名の通っている大会社。受付を抜けてエレベーターに乗り込み、5階で降りて真っ直ぐ進む。
「ちょっと!道開けて!」
先に廊下にいたOLがひそひそと言っているのが聞こえる。
「怖かった〜」
通り過ぎてからそんな事を言われるのも慣れている。何故なら、佐久間幸太は子供の頃から人相が悪い事で有名だったからだ。この顔のせいで、今まで友達と呼べるのはたった数人しかいなかった。大体の人は一目見ただけで関わりたくないと思っていた。
(俺だって好きでこんな顔になった訳じゃねーよ)
心の中でそんな事をぼやきながら、幸太は歩いて行った。
小学生の頃に両親が離婚し、母親に付いて行ったが、その母親もすぐに再婚。幸太の居場所は徐々に消えていき、中学に上がる頃には家族に認識されなくなった(ただ無視されていただけだが)。
その後は親戚の家を転々とし、高校卒業と同時に一人暮らしを始めた。娯楽を1つも経験していない代償に、成績は常に学年トップを取り続け、特待生として有名大学に進学、今に至る。
会社に入っても幸太の位置付けはさほど変わらなかった。
‘‘仕事は出来るが愛想もクソもないロボット”
これが幸太につけられた現在のレッテルだ。幸太の人生は、名前ほど幸せな物でも無かった。
1日の仕事を終え、同じ帰宅路を帰る。そんな時だった。幸太はいつも降りている駅の1つ前の駅で降りた。意味は特にない。こんなにも些細な事で、現状が変わるかもしれない、そう思ったのかもしれない。
駅から少し進むと、河川敷に出た。ふと横目で橋の方を見ると、橋の下で小さな女の子が一人で座っていた。小学生くらいだろうか。
「お前も1人なのか」
ふと呟く。そんな自分が少し嫌だったのか、幸太は走って家まで帰った。しかし、あの少女だけが幸太の頭の中に残り続けていた。
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