やおよろず
瓦偶人
プロローグ
相対する二人が居たのは、何もない空間であった。
仲が良いという雰囲気ではないが、けして険悪な関係という訳でもなさそうだった。前からの知り合いなのかもしれなかったが、あまりに彼らの容姿がちがうので妙というか変というか、なんだか不思議な感じだ。
一人は美しい女性で、背に鳥のような翼を持っており、もう一人は生身が甲冑そのものであるような、山のごとき偉丈夫であった。
「そう。そろそろ始めるのね?」
つややかな髪を指先で弄びながら、嗜虐的な笑みを彼女は浮かべた。
そんな彼女の言葉に、偉丈夫は答える。
「左様。古来の神々は滅びつつ、
「よく分からないけど、要は国を滅ぼすって事で良いのよね?」
「左様」
偉丈夫の返事に、有翼の女はますます笑みを深めた。
「まあ、私としては面白そうだし、協力するのも構わないけど、そんなに上手くいくのかしらね・・・・・・ほら、なんだっけ。
「心配無用。各地の
「ふーん?」
偉丈夫の迂遠な表現に、彼女は首を傾げたが目的は概ね理解出来たので、特にそれ以上踏み込むことはせず、彼女は会話を切り上げる。
「それじゃ、私はそろそろ行くけど・・・・・・用があったらまた呼んで、話でも聞かせてちょうだい」
「あい分かった」
短い返事を聞いて、彼女はその場を去ろうとする。
その時、ふと忘れていたことでも思い出したのか、自分の荷物を漁りながら偉丈夫へと彼女は口を開いた。
「そうそう、忘れていたけど・・・・・・これ。丁度手に入ったからあげるわ」
差し出された彼女の手には、透き通る光沢をもつ飴色をした林檎のような実が乗っていた。
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