第22話お迎え

土曜日だというのに神谷が家まで来ている。


え、なんで?

神谷が俺の休日にまで侵食してくる。

こいつ毒かなんかなの? 俺の生活蝕んでいくんだけど。


そんなことよりなんでこいつ来てんの?

つーかなんでここが俺の部屋って知ってんの?

ほんと怖い、ストーカーじゃない?


とりあえず居留守しとけばいいか。

わざわざ出てやることもないだろう。

こういうやばいやつには関わらないのが安全な対処法だ。

それいつも俺ができてないことだよな。


まぁ今回は無理矢理とかできないだろう。

ここで静かに待ってることで諦めて帰ってくれるはず。


「いるのはわかっている。諦めて出てきなさい」

「そういうのやめて。迷惑だから」


あ、やべ。つい反応しちゃった

よくドラマでいる警察のように投降しろと言わんばかりだったから、ついね。

冤罪だ、俺は無罪の一般人だ。何も悪いことはしてない。

そう思ってればよかっただけなのに。

後悔先に立たずとは正にこのことである。


もう居留守使えないしいつもの声で喋っちゃったから人違いとも言えない。

完全に失態を晒してしまった仕方なく扉を開けて来客の対応をする。


「何しにきた」

「相馬くんが約束の時間に間に合いそうになかったから」

「は? 約束?」


なんのこと言ってんだこいつは。

約束なんて神谷とした覚えはない。

というか誰ともした覚えがない。


休日に約束ということからして待ち合わせてお出かけとかそういうことだろう。

俺がわざわざ休日使って神谷と出かける約束するなんて、ありえねー。

そう考えこれは神谷の妄想ということにした。


「一昨日一緒に帰ってるときに約束したよ? ちゃんと相馬くんもうんって言ってたし」


え、そんなわけなくね?

「遊ぼ」「うん」ってこんなやりとり俺がしたの?

絶対神谷の妄想だろこれ。


一昨日のことを思い出してみる。

やばい、メンタル強化について考えてたことしか思い出さない。

なにやってんの、あの時の俺。


え、じゃあまさか神谷の会話に適当な生返事してたってこと?

おい、俺の危機管理能力どこ行った。

こんなのでぼっちライフ送るとか真のぼっちには程遠いわ。


「あー、そんときなんも考えてなくて適当に返事してたわ。だからこれはなしで」

「それではいそうですかとはならないよ、相馬くん。ちゃんと約束したのは私が覚えてるから」


えー、逃げらんないじゃん。

昨日いなくて安心してたのに。


「……はぁ、わかったよ。準備するから待ってろ」


そう言い部屋に戻って着替える。


「待たせたな」

「ううん、今来たとこ」


なんでテンプレ的な会話しようとするんですか?

さすがにそれは通用しないよ?

だってさっき迎え来られて無理矢理連れてかれるんだから。


「そういうのいいから手短に済ませてくれ」


そう言うと神谷は少しむっとしていた。


「そういう言い方もよくないけど、それよりも女の子と出かけるときにまず言うことは?」


それを言われて神谷の服装を見る。

上はTシャツにパーカーを着ており、下はホットパンツで白い太ももが見えている。

いつもはおろしている髪をポニーテールにしておりさらにつばの広い帽子をかぶっている。

派手さはなく活発な印象を受けつばの広い帽子で顔が見えづらくなっている。

ここまで確認したが俺はあえて神谷の望んでいないことを言う。


「もう帰りたい」

「全然ダメ。これがテストだったら0点だよ」


それでいいです。

神谷検定とか受けたくない。


「まぁいいよ。じゃ行こっか」


そう言い手を伸ばしてくる。

いや、握らないからな。

俺そんな軽い男じゃないから。


それを無視して歩き始める。

どこ行くか知らないんだけどね。

だから神谷の少し後ろを歩いていたけどそれをよしとしない神谷が隣に並んでくる。

ほんとそれ好きだね。

なんでいつもその距離感なんですか、俺が抵抗してんのに。


神谷の隣を歩きながらふと気になっていたことを思い出す。


「なぁ、なんでお前俺が家にいるってわかったんだ?」


今日は休日だから俺が一人で出かけていてもおかしくなかった。

いやまぁ、多分早く起きてても家でいたとは思うけど。


「電気メーター見たらわかるよ。寝起きみたいだったけどなんかつけっぱだったの?」


え、なにそれ怖い。

確かに昨日はゲームして寝落ちしたからつけっぱだったけど。

普通そんなの確認する?

ドラマで変な影響受けてるんじゃない?


ちょっとというかかなり引いていると神谷が不思議そうにしている。

これあれだな、アニメやゲームよりドラマの方が悪影響だな。

普通やらないことまで学んじゃってるよ。


流石にこの話題はもう触れたくなかったので別の話にする。


「で、今どこ向かってんの?」

「え、一昨日遊園地って話したのに」


あ、そんときのことはほんとになんも覚えてないんですよ。

覚えてたら俺の完璧な居留守を見せてたんだけどな。


「じゃあほんとに何も覚えてないの?」

「そうだな」

「キスしたことは?」

「してねーわ!」


何いってんの、こいつ。

してるわけないだろ。え、してないよね?


「まぁしてないけど昨日休むこと伝えたのは?」

「……知らなかった」


それ伝えてくれてたのか。

ちゃんと覚えとけよ、無駄な労力使ったじゃん。


一昨日の俺に何度目になるかわからない怒りをぶつけていると駅についていた。

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