第9話家庭事情

神谷がマンションに入ったので俺もマンションに入ることにする。


202号室が俺の部屋なので階段を上り二階に行く。

202号室のカギを開けて部屋に入る。


このマンションは間取りはまず玄関がありそこからリビングに続く廊下がある。

その廊下の右手側にトイレと浴室がある。

廊下の先にあるリビングにキッチンがあり、さらにその奥に寝室がある。


それほど広くはないが一人暮らしならワンルームもあるからこれでも広い方だろう。


マンション内のことについて話したがそれ以前になぜ俺が一人暮らしをしているかと疑問に思った人もいるだろう。

正直思い出したくはないが仕方ないので話していくことにしよう。




あれは俺が小学生の頃のことだ。


小学校に入る前くらいから父親の母親に対するDVが起きていた。

それが数年続き、俺が小学校三年の頃に母親の不倫が発覚した。

父親のDVに嫌気がさし、母親が別の男と何度も密会をしていたのだ。


これにより離婚の話が巻き起こり、裁判が開かれていた。

裁判では不倫とDVについてのことばかりだった。


どっちもクズで最低なんだがこの裁判には勝者がいる。

勝ったのは父親の方だった。

本来ならある程度お互いが悪いということで話が終わることだろうが、父親は母親の不倫を知ってからDVを一切しなくなりさらに不倫の決定的証拠を手に入れてから離婚問題を起こしていたのである。


つまり裁判では不倫の証拠は提示されたが、DVの証拠がなかったので賠償金と養育費をガッポリと手に入れたのである。


そのお金で俺に一人暮らしをさせているというわけだ。

俺がこんな家族と一緒に居たくないと望んだわけだが、父親の方もすんなり了解していた。

まぁ俺が母親の血を継いでるから嫌だったのだろう。


そうして俺は一人暮らしをしている。

これが俺が他人を信じられなくなった原因である。……正確にはこれだけではないがこれが主な原因だ。

親同士のいざこざを幼いころに間近で見させられていたのだ、こうなってもおかしくないだろう。


ただ一人暮らしの条件が二つ出されている。

親権を持っている父親に長期休暇の度に一度連絡するということ。

そしてもう一つは当然学生なのだから勉強である。


あんな家族ともう二度と過ごしたくないから、俺は家で毎日その日の復習と予習をしている。

まぁ勉強だけじゃ辛いからゲームなんかも暇つぶしにしているがな。

やってると言っても好きでやってるだけで決してガチ勢ではないからな。




過去の話も終わったのでふとテレビをつけると神谷が映っていた。

何事かと思ったがこれは今季のドラマだったようだ。

毎日演技されてても実際にテレビで見ると再度神谷が女優であることを認識させられた。


「あ、あなたのことが、好き」


テレビからそんな言葉が聞こえた。

今日聞いた言葉と全く同じだ。

ドラマの中の男の反応は神谷の発言が信じられず固まっているような感じだ。

俺と同じような反応だ。


あいつが笑ってたのはこういうことか。

まだ放送されてないドラマのワンシーンを再現したように感じたからということだろう。

だから演技が向いてるかもって言ったのだろう。

まぁそれはいい。


だが、本気にしちゃった? は許してねぇからな、神谷!

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