第7話三度目の演技

図書委員会もいざこざがあったがすんなりと終わり本日の学校での全行程が終了した。

やっと帰れる。

手早く帰宅の準備をして図書室を出る。


程なく歩くと後ろから声をかけられる。

最近これよくありますね。


「あいや、待たれよ」


そんな時代劇風な喋りで話しかけられ振り向くとやはりというべきだろう、神谷が立っていた。


「それ役選び間違えてるぞ」


男の武士のような発言をして呼び止められたのだ。そうも言いたくなる。

最近の時代劇って女もああいう発言するの?


「苦しゅうない、近うよれ」

「え、殿様だったの? てっきり武士かと思ってたわ」

「よいではないかよいではないか」

「……もう何がなんだかわかんねーわ」


最初武士だと思ったら次殿様だよ? そんで最後悪代官とか設定ブレブレすぎ。

纏めてから役演じようよ。

というか全部男の役だし、だから設定纏まってないんだろ。

普段からやってるのやりなよ。


いつのまにか神谷が隣まで来ていた。

なんかモジモジしている。

また演技してくるのだろうか。


「……い、一緒に帰らない?」


少し上目遣いで不安げに見上げてくる。

やはり演技だろうな。


にしても一緒に帰らない、か。

この人気女優さんはスキャンダルとか考えてないのか?

あれって学生には関係ないの?


「……俺テレビ出たくない」

「なんのこと? ドッキリとかじゃないけど」


そうか、ドッキリもあるのか。

あのままあっさりオーケーしていたらカメラマンとドッキリ大成功と書いたあれが出てきていたのか。

危なかった。

バラエティで一般人ネタにすんなよ。

恐るべし芸能界。


「で、一緒に帰ってくれる?」

「いや、スキャンダルとかもあるから」


俺は目線に黒線入れられた写真流出されて、そんでそれをニュースで報道されたくないんだよ。


「スキャンダルなんか気にする必要ないよ。見つかっても正直に言えばいいんだから」


それでもお前の仕事に影響するじゃないのか?と思ったけど言わずにいると


「これは隠さなきゃいけないやましい関係なの?」


俺の顔を覗き込むようにして聞いてきた。


やましい関係では全くないが、正直に答えると言った神谷の発言を信じていいのだろうか。

ほんとに私が勝手に絡んでるだけですって言えるのだろうか。

……こいつ絶対友達ですとか言いそうだな。


でもこれ以上否定しても俺がやましい関係だと思ってると神谷が勘違いするだろう。


「……今日だけな」

「ええー、まだまだ図書委員のある日とか一緒に帰るよ」

「……途中までな」

「うん、ありがと」


そう言って眩しいほどの笑顔を向けてきた。

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