第122粧 黒の神子の視ていた光景:1
大変おまたせいたしました!
前回から間が空いてしまったので…前回までのあらすじ!
(このあたりは数か月後に削除予定です)
~~~前回までのあらすじ~~~
乙女ゲーム世界の悪役令嬢に転生してしまったノワールは、双子の片割れであるキュリテと入れ替わり変装をすることで、破滅への道を回避をしようと奮闘中。
ヒロインであるヒナタとの仲も深めつつあったノワール。
しかし、ヒナタがいじめられ始め、ゲームでの取り巻き令嬢トリアリスに敵視されノワールには虚言癖があると公言されてしまうなど、状況は次第に不穏になり始めていた。
そんな中、変装に気付いたガイアスには壁ドンされ、頼ってほしいと言われたノワールは少しずつ彼に歩み寄ろうとし始める。
ある日、占星術師が新たな予言を発表する回にノワールが招待されると伝えられる。
そう伝えられた彼女だが、気付けば使者たちに責められ、キュリテに手をかける光景を目にしてしまった。
~~~前回までのあらすじ ここまで~~~
――チュー。
「ッ!!」
間の抜けた音がして、私が見ていたのは夢だと言うことに気付く。
飛び起きて慌てて音のした方向を見ると、私は音の鳴るネズミのあみぐるみをぎゅーっと握り締めていた。
つぶれて音を出すあみぐるみの姿から、夢で見た兄さまの苦痛にまみれた表情を思い出して、慌てて手を離した。
「ゆめ……?」
私は手を開いて閉じてを何度か繰り返して、さっきまでの感触が幻であったことを確かめた。
「良かった、あれは夢なんだ……」
そう思った途端に安心して、目にじんわりと涙が溜まりそうになる。
心臓はバクバクしていて、なかなか止まらない。
さっきまで見ていたのが夢だってことが理解出来ていても、不安な気持ちは拭えなかった。
寂しくて不安になった私は、気持ちを落ち着かせるために本棚の上に壁を向かせて飾っていた子犬のぬいぐるみに手を伸ばす。
「……」
両手に余裕で収まるこのふわふわもふもふな子犬のぬいぐるみは、婚約前にガイアスからもらった誕生日プレゼント。
これをもらった当時の私は、まだガイアスのことを避けていなかった。
素直に嬉しくて、もらってしばらくはずっと抱きしめていたほどだったのも覚えている。
でも婚約してからはガイアスのことが怖くなってしまって、連鎖的にこのぬいぐるみと目を合わせるのも怖くなって。
かと言って、捨てるなんてとんでもないことまでは出来なかった。
だって、ガイアスのこと嫌いなんかじゃなかったから……。
だから、長い間ガイアスへの複雑な思いをぬいぐるみに押し付けて、こっち見んなと言わんばかりに不自然な方向を向かせて飾っていた。
もらった頃のことを思い出しながらぎゅっと抱き締めてみたものの、思い起こすのはさっき夢の中で聞いたばかりのガイアスの失望した声ばかり……。
ちょっと前にガイアスから優しい言葉をかけてもらって感じた穏やかで暖かな感覚が、夢の中のたった一言でふっと遠のいて冷めていく気がしてしまう。
まるで、私だけが孤立してしまったかのように、心細さでいっぱいで、とてつもなく怖くなって、私は一層ぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。
「こんなに弱気になるなんて……ダメ。あれは夢なんだから……」
かと言って楽観視はしていられなかった。
使者に詰め寄られた光景は、ゲームで見たものと同じだったから。
そう、あれはただの夢じゃない。
私が黒の神子としての道を歩んだ場合に、本当に起こり得る光景になってしまう、言わば予知夢のようなものだった。
私もあんな風に、使者たちと敵対しちゃうなんて嫌だ……。
それに、折角ヒナタちゃんとも仲良くなってきているのに……。
こんなタイミングであんな夢を見るなんて、私は思っていたよりも明日の占い師の話で黒の神子の正体がバレないかが心配になっていたのかもしれない。
それよりも……。
使者たちとの敵対も気がかりだけど、いまはそれよりも最も気にしなければいけない重要なことがあった。
さっきの夢の中には一つ。
……特に、気にかかることがあったから。
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