第3着 フラグ《星の明滅》が示す未来の行方

第119粧 占星術師は双子を指名する

 トリアリスとの変なフラグを立ててしまったかも!?


 ……なんて思ってしまったので、一応構えて過ごしていたけど。


 しかし、何も起きなかった!


「後悔しますわよ!」なんて脅迫じみた台詞を言ってたのに、びっくりするくらいにトリアリスは近付いて来なかった!!


 まあ平和が何よりなんだけど、肩透かしを食らったように感じてしまった。


 そんな、ある日の休み時間のこと。


 火の使者のハウザーが椅子を寄せて始めた会話は、思わぬ内容だった。


「占い師の新たな予言の発表?」

「そう。それに君も同席して欲しいのさ」

「え? ハウザーたちは?」

「もちろん俺たちもいる。一般には発表されない内容だけど、使者が同席することになっているからね」

「一般に発表されないのに、どうしてわた……俺が一緒に?」

「占星術師殿のご希望でね。だから、俺たちにも理由は良くわからないのさ」

「……案内役のノワールの間違いじゃないの?」

「キュリテとノワール嬢を同席させて欲しい。ってことだ。つまり、二人ともだね」

「……なんで?」

「残念だけど、そこまでは俺たちにも聞かされていないんだ」


 首を横に振るハウザーに、私は唸り声をあげた。


「うーん……」


 ヒナタちゃんへのいじめやノワールに対する糾弾があって、バタバタしてるタイミングで?


 占い師が指名した、案内役のノワールだけじゃなくて?


 キュリテも加えて行う予言の発表で、一体何を言う気なんだろう。


 どう転んでもロクな目に会う予感がしない!


 もしかして……公開処刑ならぬ、密室で黒の神子の非公開断罪!?

 人前よりマシとは言え、このタイミングで?


「解せぬ!」

「また何か変なこと考えていたようだね? ……女の子がするものじゃない表情してたよ。可愛い顔しているのになあ」

「男装中に可愛い顔してるって言われると何か微妙な気分なんだけど。ハウザーが兄さま口説いてる的な感覚がするよ」

「冗談でも変な想像しないでくれよ……」


 大丈夫、具体的な想像はまだしていない!


 顔をしかめたハウザーに、私は口を尖らせながら問いかけた。


「で。それ、欠席しても大丈夫?」

「気が進まないのかい?」

「せめて何を話すのか前もって分かれば……。ノワールの案内役任命の時みたいに、何か押し付けられるんじゃないよね? 予言だけ?」

「随分と警戒しているね。まあ、占星術師殿の件については、ノワール嬢が案内役になったことで起きたゴタゴタがあるから、気持ちは分かるけどさ……」

「その上、駄犬くんの一件は大変だったもんね」


 二人で思い出しては溜め息を付く。


 今では私も含めて仲良くお昼ご飯を食べているけど、駄犬くんの使者騒ぎがなかったらヒナタちゃんは今頃どうしてたんだろう。


 そう思うと、あの騒ぎは無駄にはならなかったかな。


 当時は命の危機を感じることもあったので、起きない方が安心だったけどね!

 でも、起きちゃったものはしょうがない!

 無事に済んだし、結果よければすべてヨシ!


「それにしても、君は好奇心旺盛だから出席したがると思ったんだけどな」

「まあ……気になるって言えば気になるんだけど……」

「占星術師殿もあくまでも強制ではないと言っていたからね。無理強いすることはないから、気が向かなければ欠席すると良いさ」


 そうは言っても、出席しなかったらしなかったで占い師が何を言ってたか気になる。


 欠席裁判みたいなことになってたら嫌すぎるし。


 なんだか次々とネガティブな発想ばかりが浮かんできて、同席しなかった時の方がデメリット多い気がしてしまう。


「うーん……」

「そんなに深刻に悩まなくても大丈夫さ。居なくても誰も咎めはしないよ」


 ハウザーは気軽に言うけど、占い師の発表は深刻な話をするんじゃないのかな?


 私には二つの選択肢を与えられているけど、精神的には与えられた選択肢は、実質一つだけのようにも感じる。


「……分かったよ。行く」

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