双子兄さまの悪役令嬢女装? 大丈夫、破滅回避の主戦力だよ! ~深層反転の真偽編集者《バイナリィヱディタ》~
江東乃かりん(旧:江東のかりん)
第1装 女装始めませんこと?
第1着 序章始めませんこと?
第001粧 兄さまと女装相談
「兄さま、私の代わりに悪役令嬢になりませんこと?」
「なにを言っているんだ、お前は」
半目になった琥珀の瞳が私を見返す。
目の前で呆れた様子でいる銀髪の少年は、私の双子の兄さま。
「いままでずっと、私は悪役令嬢だって言っていたでしょう?」
「この世界は乙女ゲームの中だとか、しきりに言っていたあれのことか」
私とそっくりの顔なので自分で言うのもなんだけど、兄さまは誰が見ても美少年。
喋らなければどこか儚げな兄さまと違ってアホ面と言われることが多い私だけど、同じ顔なので私も美人さんと言うことには変わりはない!
「そうだよ!」
と言うわけで、私はそれなりに自信のある胸を張って見せる。
えっへん。
「私はこれまで、この世界が乙女ゲームだってことを証明してきたよね!」
「証明?」
何のことかと首を傾げる兄さまに向かって、ビシッと指差しする。
「ほら、色々予言したじゃない! これまでその通りになりかけて、二人でそれを回避したよね!」
「あー……。確かお前が『今日、この壺が割れて私たちが怒られる!』なんてことを言ったと思ったら、うっかり触って落としそうになったやつ?」
「うっ、それは……、そんなこともあったけど、結局はセーフだったよね!」
「間に合ったのは、俺がギリギリのところで受け止めたからなんだけどな」
「う、ぐぐ。で、でもあれが割れてたら、兄さまのせいになるところだったんだから!」
「どっちにしても、俺がフォローすることになるんじゃないか」
はっ、確かに!
いや、まだ諦めない!
私は呆れ顔の兄さまに続けて言った。
「ほ、ほかにもあるよね!!」
「そうだな……。確か婚約後初めてガイアスが家に来た日に、『今日ガイアスと会うと、階段から落ちて大怪我の予感がある』なんて言ってたやつか?」
ちなみにガイアスと言うのは、私の婚約者の名前。
「そう! 良く覚えてるね!」
「で、実際には、あいつから逃げるために裏の階段の手すりに座って一階まで滑り降りようとして、落ちて……。本当に、大怪我しそうになったな」
「ぐ……」
「あれ、かなり危なかったよな? 忘れるわけがないだろう」
「私の軽い怪我だけで済んだから、良いじゃないの!」
「まさか、あのとき俺がお前の下敷きになったこと、忘れてないだろうな」
「その節はありがとうございます……」
そのときは痛い思いをさせちゃったので、素直に謝るしかない。
「問題が起きたとき、ノワールは何も解決してないよな?」
「わかりますとも……!!」
ちなみにノワールは私の名前。
兄さまの名前はキュリテ。
「と言うことは、予言の証明は出来ていないな?」
「事象としては再現してるじゃにゃい!」
攻めて来る兄さまに圧倒されて、思わず噛んだ!
お前ダメな奴だな、ポンコツだな。みたいな生暖かい目で見られて悲しくなる。
「とにかく、私の予言によると」
「これまでのやらかしたことを振り返ると、あれは予言じゃない。予告だろう?」
このままじゃ小言が終わらない!
「とーにーかーく!」
話を聞いてー! と主張するために両手をバタバタと振る。
「はいはい。それで、次の予言では、俺は何に巻き込まれるんだ?」
「次にやるべきことは、女装だよ!」
「は?」
兄さまが一瞬フリーズした。
すぐに我に返ったけど。
「……なんだって?」
「兄さまが女装で私に変装して、破滅を回避するんだよ!」
大事な事なので、二度言いました。
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