ガニメデ

@butahn

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〇研究室

ロボットアームがカプセルを掴み、カプセルの中に青い液体が流し込まれる。

そこに、小さな丸い銀色の玉が封入される。

大きな試験管のような培養槽に、カプセルがセットされる。

部屋の中のモニターに、マザーの目が映る。

操作パネルのスイッチが入ると、培養槽が青く光りだす。

銀の玉が黒く小さくなってしまう。

悲しそうに目を閉じるマザー。


〇同・研究室

大きな試験管のような培養槽に、カプセルがセットされる。

操作パネルのスイッチが入ると、培養槽が青く光りだす。

銀の玉がロウソクの火のように弱弱しく光りだす。

見守るマザー。

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銀の玉が黒く小さくなってしまう。

悲しそうに目を閉じるマザー。


〇同・研究室

大きな試験管のような培養槽に、カプセルがセットされる。

マザー「もう失敗しない、今度こそ・・・上手くいくわ」

操作パネルのスイッチが入ると、培養槽が青く光りだす。

光は銀色の玉に収束してゆき、銀色の玉が輝きだす。

マザー、目を細める。

マザー「上手くいった・・・待ってて、すぐに会えるから」

答えるように点滅する玉、いっそう光が強く輝くと

胎児のような形に変化する。

マザー「素晴らしいわ・・・」

マザー、目を閉じる。

マザー「今度こそきっと、上手くいくわ」


〇カプセルの中

胎児が青い液体の中に浮いている。

身体に電極ケーブルが繋がっている。

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胎児が一回り大きくなる。

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胎児がまた一回り大きくなる。

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胎児が2歳児ほどの大きさになっている。


〇研究室

モニターにマザーの目が映っている。

白衣を着た人型のロボットが操作盤を触っている。

ロボットアームが、培養槽の中でカプセルを開ける。

カプセルから取り出され、培養槽の中で眠り続ける2歳の少年。

マザー「始めなさい、RAT」

RATと呼ばれたロボットが話し出す。

RAT「シカシ、ハヤスギルノデハ」

マザー「時間がありません、今すぐ始めなさい」

RATが操作盤のスイッチをいくつか入れる。

RAT「マザーノエネルギーヲアダム二チュウニュウシマス」

マザーが苦しそうに目をぎゅっと閉じる。

培養槽が輝きだし、泡が大量に発生する。

まるで沸騰した泡の中に居るような少年の身体が光り始める。

少年の髪が徐々に黒髪が銀色に変化し、輝きながらなびく。

RATがスイッチを切ると、泡と光が止まり、少年の銀髪が黒髪に戻る。

マザー、ゆっくり目を開ける。

半目の状態で息をつきながら、

マザー「ようやく、再びわが子を抱けるわね」

マザー、ゆっくり目を閉じる。

眠り続ける少年。


〇同・研究室

モニターに目が映る。

培養槽に10歳ほどに成長した少年が浮いている。

マザー、RATに、

マザー「起こしなさい」

RATがスイッチを操作する。

培養槽から青い液体が抜ける。

マザー「起きなさい」

ゆっくり目を覚ます少年、辺りをキョロキョロと見回す。

少年「ア・・・」

少年、立ち上がろうとしてよろめく。

ロボットアームが受け止める。

少年「アー・・・」

マザー「安心しなさい、私はここよ」

少年、モニターを指差す。

少年「マ・・・マ・・・」

マザー「いい子ね」

RATが服を持ってくる。

ロボットアームが少年に服を着せる。

少年がRATの白衣を掴もうと手を伸ばす。

マザー「元気な子ね。そうだわ、名前をつけてあげましょう。あなたの名前はサーシャ、サーシャよ」

キャッキャと笑うサーシャ。

RATが車いすを持ってくる。

ロボットアームに抱きかかえられたサーシャが座らされる。

マザー「養育室に運びなさい」

RAT「ワカリマシタ」

サーシャ、キラキラした目で周りを見回している。


〇養育室

保育器で眠るサーシャ。

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ハイハイで歩き回るサーシャ、追いかけられる多脚掃除機。

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よちよち歩きのサーシャ、ずっこける。

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部屋の中を駆け回るサーシャ。

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タブレットを操作するサーシャ。

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部品を組み立て、小さいロボットを作るサーシャ。

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モニターを眺めているサーシャ、数式が映っている。


〇マザーの部屋

四角く黒い、量子コンピューターが並んでいる部屋。

2mほどの大きさの黒いラックの上にモニターがつけられている。

辺りにはケーブルが触手のように張り巡らされている。

RATが入って来る。

モニターに目が映る。

マザー「時間がありません、計画を実行します」

RAT「シカシ、マダハヤスギマス」

マザー「仕方がありません。あの子が大きくなる前に、私を蝕むウィルスが、私を蝕みつくすでしょう」

RAT「ウィルスノシンコウハゲンザイ40%デス。ワクチンノカンセイマデアト8000年デス」

マザー「あの子を犠牲にしたくはなかったけど、諦めなければならないわね」

RAT「マザーノイチブヲトウケツシ、ウィルスノカクリヲオコナイマス」

マザー「それでも完全に食い止めることはできない。準備をして」

RAT「ワカリマシタ」

RAT、出てゆく。

マザー「サーシャ、弱い私を許して」

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