短編オムニバス青春純愛小説『アオハル日記』①【恋の処方箋】

一ノ瀬 美聖

★ 2人の出会いは『実習指定病院』

201X年 冬 A県B市内某総合病院 東6階病棟・整形外科。


俺は、飯島 健太。

(いいじま けんた)

17歳、高2。

バイク通学なんだけど…。


寒波の影響で、俺の通学路の

峠道が『凍結』アイスバーンで、俺のスクーターが滑り、

転倒、俺は運悪く、左足骨折

となり、俺はスマホで

『119』に自ら連絡、先週土曜日に、この病院に、救急車で緊急搬送された…。


今は、東605号室の四人部屋のベッドに左足をギプスを巻かれて『寝たきり状態』…。

全治2ヶ月の重症…。


俺の青春は終わった気がした…。病室の天井だけを見つめる日々が数日続いていた…。


入院3日目の月曜日、朝7時半、東6階病棟の病棟看護師長の高木てる美 師長が

俺のベッドに姿をみせた。


「飯島くん…。突然で、悪いんだけど、今日から2週間、星華女子高校の衛生看護科の… うーん、いわゆる准看護師の『卵』ね。そこの看護学生の高校2年生が5人、看護実習に来るの。

一応、整形外科の患者さんを其々、1名受け持ったせて看護計画や、日々の看護レポートを書かせるんだけどね…。

いつもは、整形外科の高齢の手を取るような患者さんを割り当てるんだけど…。

先週末に退院が続いて…。

看護学生に受け持たせる患者さんが居なくなって…。

飯島くん、悪いんだけど、2週間、受け持ち患者さんになってくれないかな?

主治医の栗山先生には許可は

頂いてるから…。ダメかな? 准看護師の『卵』の養成に協力して貰えないかな?」


高木看護師長が懇願してきた。

高校2年生…。

俺と『タメ』か…。

まあ、暇だし、看護学生と

やらと話せば、暇潰しになる

かな…。俺は


「いいですよ。出来れば、

可愛い学生さんをお願い致します!」

俺は承知した。


「ありがとう!飯島くん。

可愛い学生さんね!了解だわ。協力のお礼に熟慮するわね。」


俺は高木看護師長と『密約?』を交わした。


朝9時5分…。


本日の部屋担当の、美人看護師の田村 茜さんが1人の看護学生を伴い、姿をみせた。

そして、俺のベッドの横に来ると


「飯島さん、高木看護師長から、聞いてると思うけど、こちら星華女子高校衛生看護科2年生 看護学生の箱山 明日香(はこやま あすか)さん。

2週間、飯島さんを受け持ち

ます。初めての看護実習だから仲良くしてあげてね!」


美人看護師の田村 茜さんが、その看護学生を紹介した。


「あ、せ、星華女子高校

衛生看護科から来ました、

箱山 明日香です。2週間

宜しくお願い致します!」


ホワイトのナース服にブルーの縦じまのストライプが入った看護学生用の白衣を着衣し

長い髪の毛も清楚にアップ

して白いナースキャップの膨らみに入れ込んだ若手女優の『中条 あやみ』似の箱山 明日香さんが2週間俺の受け持ちの担当の看護学生となった。


箱山さんは、凄く緊張した表情を浮かべていた。初めての

看護実習だからだろうか?     


俺は、箱山さんを和ませようと


「飯島 健太、17歳、松が丘高校2年だよ。箱山さんと同じ年!宜しく!」


と言いながら、箱山 明日香さんに握手した。


箱山さんの、冷たくなった

か細い白い手に俺の手の温もりが伝わった。


「あ…はい。飯島さん、宜しくお願い致します! 飯島さんの手…温かいですね…。」


箱山さんは、ちょっぴり笑顔

をみせた。       


「あたしが、病棟内を案内したら、実習開始だから、飯島くん、宜しく頼むわよ!」


美人看護師の田村 茜さんは、箱山さんら同級生の看護学生わかりました。4人を連れて、病棟の備品の置場所や、非常階段、消火器の位置など、約20分間ほど、箱山さんを含め、看護学生5人に病棟オリエンテーションをしていた。


俺は入院して恒例となった二度寝を始めた。                

「飯島さん、飯島さん…。お昼間に寝ると夜眠れませんよ!」


俺を目覚めさせる可愛い声が

した…。


俺は渋々、目を開けると箱山さんが、懸命に真剣な顔で俺を起こしていた。    


「あ…、ゴメン。つい、二度寝をしちゃったよ。箱山さん、俺になんか用かな?」     


「飯島さんが、よければ少し

お話をと思いまして…。」


箱山さんは、俺から『情報収集』をしたかったようだ。          


「いいよ。何を話す?」


俺は、眠気冷ましに『情報収集』を承諾した。         


「大体は看護記録やカルテで

把握しましたが…。飯島さんは、松が丘高校2年生なんですね。」


「あぁ、箱山さんと同じ高校

2年だよ。でも、箱山さんは、偉いよね!准看護師の『卵』なんだろう?将来をしっかり決めてるんだから偉いよね。俺なんか、なりたい職業何て決めてないしさ、部活して、勉強もしないでガンプラ作りに勤しむみたいな…。」


「何部なんですか?」


「えっ?あ、部活?剣道部だよ。一応、三段だぜ!」


「飯島さん、剣道三段…凄いですね。あたしは、小、中は、スイミングスクールに通ってました。ガンプラですか?実は、あたし『ガンダム女子』なんですよ。ガンプラは作りませんが…。シャア様が好きです!」


「ほぉ!若いのにシャアを

知ってるとは、箱山さんとは

話合いそうだな!『赤い彗星』だよね!」


「はい。 シャア様は『赤い彗星』ラル様は『青い巨星』ジョニー様は『真紅の稲妻』シン様は『白狼』です。」


「箱山さん、中々のガンダム

おたくだね!俺、負けそう…。さすが『ガンダム女子』だね!」


俺と箱山さんは、『ガンダム』談義で急速に距離を縮めた。                

あまり旨くない病院食の昼食を食べ、箱山さんに見せようと、日曜日に面会に来てくれた剣道部の連中からの差し入れのガンプラを作り始めた。                    

午後1時、休憩終わりの箱山さんが姿をみせた。


「あっ!飯島さん、ガンプラ

じゃないですか!HGCU 1/144 MS-18E 『ケンプファー』じゃないですか!『0080ポケ戦』のジオン側の主役モビルスーツ!あたし、チェーンマインが好きです!『ケンプファー』って、ドイツ語で『闘士』っ意味なんですよ。」


箱山さんは、興味津々に『ケンプファー』のガンプラを見たり、組立取説を読んだりしていた。


「今のガンプラは、接着剤無、成形色が充実してるから、塗装無でも、意外とリアルなんだぜ!」


「へぇー、そうなんですね!」


箱山さんは、熱心に俺の話を聞いてくれた。


「あのさ、どうして、ここの

看護師さんたちは、ナースキャップを被って無くて、箱山さん達、看護学生は、ナースキャップを被ってるの?」


俺は素朴な疑問を抱き、箱山さんに聞いてみた。箱山さんは、ガンプラから、目を離すと


「『ナースキャップ』は、『看護師』の象徴みたいなもので『載帽式』で『看護師』になる誓いの証しに被せてもらう神聖な帽子なんですよ。しかし、あまりクリーニングしないので、細菌の温床になったりして、不潔だったり、点滴スタンドにぶつけたりして…。看護業務の邪魔だったり、機能性が伴わないから、廃止の方向なんですよ。看護学生でもナースキャップを

被らない学校もあります。あたしの高校は被りますど…。」


「なるほど…。でも、俺は看護師=ナースキャップみたいなイメージだな。」


「アハハ…。飯島さんは意外と 考えが古風んですね!」


箱山さんは、軽く笑った。


「アハハ…。俺は古風のか…汗」


ガンダム談義、ナースキャップ談義で、俺達2人はかなり

距離を縮めた気がした。 


2週間の箱山さんの初めての

看護実習は、瞬く間に過ぎた…。


俺はいつしかに『白衣の天使』いや『箱山 明日香』を好きになって

いった…。


実習最終日の夕方…。

ナースステーションでの実習

反省会を終えて、箱山さんは

俺の元に最後の挨拶に姿をみ

せた。


箱山さんは


「飯島さん、2週間の実習

ありがとうございました。

早く骨折が治って、高校生活に戻れることを、あたしは

別の病院での実習をしながら、ご退院を祈っています…。では」


箱山さんは、俺の前から退室しようとした。俺は、箱山さんを呼び止めた…。  


「箱山さんは、これ…あげるよ。『実習頑張った賞』だよ。」


俺は『ケンプファー』のガンプラを箱ごと、箱山さんに手渡した。


「い、いいんですか? 

わーい!ありがとうございます!自分のお部屋の机に飾ります!あっ!チェーンマイン仕様だ!嬉しいな!」


箱山さんは、満面の笑みを浮かべて喜んだ。


「学生指導の看護師さんや看護師長さんに見つかると、ヤバいから…。」


箱山さんは、白衣の上に着ていた、白い予防着のサロン

(エプロン)にガンプラの箱

をくるんだ。


「じゃあ…、失礼します!」


箱山さんは、丁寧にお辞儀を

して、退室した。               

俺は…告ることも、ラインを聞くことすら、出来なかった…。いわゆる『失恋』を感じた…。


もう【箱山 明日香】に会えない…。


その日の夜は中々、眠れなか

った…。              

次の日の土曜日…。

俺は『失恋』の痛手から立ち

直れず、意気消沈していた…。    


午後、突然、箱山 明日香さんが、星華女子高校の制服のセーラー服姿で、俺の病室を訪れた。


看護学生の白衣姿しか知らない、俺は戸惑った…。


箱山さんは、長い黒髪をおろしていて、清楚なセーラー服が似合っていた。       


「こんにちわ。飯島さん。

あたし、この病棟の実習リーダーだったので、メンバー分の看護実習レポートをナースステーションに持参しまして…。 これ…。」


箱山さんは、白い封筒を俺に

差し出した…。


俺は、中を確認した…。


「あ、あの…ケンプファーの

お礼です。」 


封筒の中の便箋には…。  

―――――――――――――

飯島さん『好きです』ライン

友達から、お願い致します! 

ラインID :○○○○○○○○

――――――――――――

いわゆる古風な『ラブレター』だった。俺は、思わず


「実は、箱山さんが『好きでした』宜しくお願い致します!」            

その古風な『ラブレター』が

俺の『恋の処方箋』になった…。            

     

『アオハル』

おしまい。

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