小話 イズミ

小枝が折れてパキパキなっていた。


暗い森の中、イズミは脇目も振らず、奥へと向かっていく。


暫く進むと、少し開けたところで焚き火が見えた。そこまで来ると足を止め、メガネとマフラーを乱暴に取り外す。焚き火近くに立てられたテントの中に乱暴に放り込んだ。


「あっつ!マジでやってらんないんだけど!」


そのまま今度は乱暴に帽子を取ると、ずるっと金色の髪の毛も落ちてきた。その下は金色のショートカットだ。


声色もリゼと話していたときとは事なり、低い声に変わった。


地面に落ちる前に掴むと、同じようにテントの中に入れるが、テントの中から出てきたマフラーで阻まれた。


テントの中からごそごそ動き、こちらも金色の髪の人物が現れた。


「全く、作戦失敗したから撤収じゃなくて、敵を探りに行けって、しかも俺に女装させてさ…」


「仕方がなかろう、わらわの面は割れておる。長生きなぞするもんではないな」


テントの中から出てきた人は、イズミが放り込んだ帽子を取り、被った。


「で、データとれてました?」


「今から確認する。」


イズミが投げ込んだメガネを取り出して、なにか操作をすると、小さい金属片を取り出す。


それを別な道具に入れると、空中にスクリーンが映し出された。スクリーンにはサラとリゼの顔写真と、何かグラフ状の表記が書かれている。


「ふむ…素体ではなんともないと言うことか」


データを確認している間、イズミはテントの中に入り出てきた。


着替えをしてきたらしく、ワンピース姿ではなく、シャツにぴったりとしたズボン姿で、喉仏もあり今度は男性だとわかる。


「ご苦労だったな。きちんとデータ取れておった。


魔女としての素地はありそうだ」


手でリゼの顔を指すと、顔写真が大きくなる。


下のグラフ部分のうち、一部が「計測不能」と出てる。


「イズミ、次は拉致ってこい」


「な!?騎士団の縁者になってるんだぞ?おっかなくってあそこに長居できないよ!」


イズミは半泣きしながらいうと、


「イズミ」


帽子を被った人が立ち上がる。


話し方が尊大であったが、立ち上がると小さかった。


「お前はもとはコウモリだろう。飛んで逃げるが良い。


そもそも、騎士団連中の魔法は児戯に等しい」


小さい人の顔も幼かった。ただ、笑うと目は凄みを増し、幼さは微塵もなかった。

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