仕事熱心な女

森唄 鶴人

仕事熱心な女

男はこう思った。

(仕事熱心な女だな…)と。


男はここに移り住んで20年になる。仕事場も近く、とても愛着のある土地だ。ある日そこに最近女性に人気の俳優が番組のロケに来ていたらしく、人だかりができていた。男はたまたまその場にいてその様子を見ていた。別段俳優に興味はなかったが、有名人を見る機会は少ないので見ておこうと思ったのだ。男が人だかりの後ろの方にいると、隣でスーツを着たOLの女が電話をしている。

「…PC2台…」

ここらへん辺は中小企業も多い。そこに勤めているOLがPCの発注でもしているのか。なるほど人気の若手俳優よりも仕事を優先する殊勝な女だ。

数分後、突然初老の男に話しかけられた。

「20年間探したぞ。連続殺人犯。」

男は逮捕された。その後初老の刑事はさっきのOLに向かって

「迅速な報告ご苦労だった。」

女刑事だったのか。PCはパトカーか。

男はこう思った。

(仕事熱心な女だな)と。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

仕事熱心な女 森唄 鶴人 @morinana

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ