第39話 マッサージ練習

 穂波さんをマッサージでトロトロにして見せる!

 そう意気込んだのはいいものの……


「どうすりゃいいんだ?」


 マッサージの専門学校に通うか?

 いや、でも元々お金ないし……そうなると、誰かに手伝ってもらうしかないわけで……


 考えに考え、思い立った俺は、とある人物の部屋で土下座をして頼み込んでいた。


「……という事情だ。試験範囲を聞くためにも、練習をさせてくれ」


 ベッドの上に座っているその人物は、俺を侮蔑するような目で睨みつけてきている。


「へぇ~そうやって私を実験台にして、ほなてぃーにエッチなことしようと企んでるんだ」

「いやしねぇよ」


 思わず強めに突っ込んでしまった。ホントだよ? 確かにあの暴力的なまでのおっぱいと白い太ももは魅力的だけど、マッサージと題して身体いやらしく触りまくるとか、どこのマジックミラー号?

 試験範囲を聞いて欲しいと尋ねてきた張本人である瑠香は、はぁっとため息を吐いた。


「まあいいわ。今回は試験のこともあるし、幼馴染という立場に銘じて許してあげる」

「本当か!?」

「だ・け・ど! 私の特訓は厳しいわよ?」


 ニコッと笑ってウインクをして見せる瑠香の表情は、悪魔のそのものだった。


「ぎゃぁぁぁ!!! 痛い痛い痛い痛い!!」


 だが、そんな悪魔の表情も何処へ?

 レッスン開始から小一時間が経過して、瑠香はベッドの上で俺の指圧を受けて、奇声を上げている。


「そんなに痛くて気持ちいいのか?」

「んなわげあるがぁぁ!!! ちょ、タイム! ほんどにダイム!!」


 俺は指圧する指の力を弱めると、瑠香が大きな息を吐いた。


「はぁ……まさか恭太がこんなにもマッサージに関してポンコツだったとは……予想外だったわ」

「それで、どうだった、俺のマッサージ?」

「全然だめに決まってるでしょうが! 何? 私をぶち殺したいの!? ほぐすどころか、神経えぐられるまであるわよ!!」

「そ、そうか……」


 俺は自分の顎に手を当てて思案する。やはり、マッサージたるもの一筋縄ではいかんな……

 すると、瑠香はじっとりとした目で睨みつけて言ってきた。


「これは、恭太に一度普通のマッサージとは何たるかを体験させてあげないとだめみたいね……」


 そう言って、瑠香はベッドのトントンと叩いた。


「恭太、寝っ転がりなさい。気持ちいマッサージというのを教えてあげるわ」

「えっ? いや、俺がマッサージされても意味ないし」

「いいや、恭太はマッサージの気持ちよさというのを体験する必要があるわ。そしたら、そのバカ力加減も少しは分かるでしょ」

「わ、わかった」


 瑠香に促されるまま、瑠香のベッドの上にうつぶせに寝っ転がった。

 すると、瑠香はそのまま俺の太ももの上あたりに身体を乗っけてきた。


「いい? まずは、肩。肩甲骨と背骨の間辺りをこうして指で押しながら回す」


 丁度よい力加減で、気持ちいいツボのような部分を指圧されながらぐりぐりと回される。瑠香のマッサージは、とても心地よかった。


「おぉ……凄いぞ瑠香。気持ちいいぞ」

「あったり前でしょ。むしろ恭太が異常なの・よ!!!」



 瑠香が全体重をかけるようにグイっと思い切り指圧する。その瞬間、激痛が身体の神経に迸る。


「痛い痛い痛い!!」


 俺がもがくと、瑠香は力を弱めてくれる。


「ほら、痛いでしょ? 今の痛さが恭太のやってるマッサージ。あんたはもう少し力加減覚えなさい」

「す、すいません……」


 なるほど……俺、こんな力入れてマッサージしてたのか。もう少し力加減には気を付けよう……


「おけ。それじゃあ、今度はもう一度私が寝っ転がるから、同じ要領でやってみな」


 攻守交替。今度は瑠香がベッドに寝っ転がって、俺が瑠香の太ももの上に乗っかる。


「いい? 上に押し上げる感じよ」

「……こうか?」


 俺は言われた通り力加減を緩めて、肩甲骨と背骨の間辺りをグリグリ回す。


「そう、いい感じ。そのまま続けて」

「わかった」


 俺はそのまま瑠香にマッサージを続ける。


「んん……そうよ、いい感じ……」


 ようやく瑠香がリラックスした声を上げるようになってきた。

 なるほど、こういう感じなんだな。

 しばらく続けていると、力の抜けきった声で瑠香が声を上げた。


「おっけぃ。大体要領は掴めてきたわね。それじゃあ、次のマッサージよ。今度は足の付け根から太ももをほぐして頂戴」

「わかった」


 俺は身体の向きを変えて、真下には瑠香のぷりっとしたお尻に、そこから伸びる長い脚が目の前に現れる。


「いい? 足の場合も力加減はさっきと同じくらいで、今度は親指と人差し指の間で挟み込むようにして」

「こ、こうか?」


 俺はおそるおそる瑠香の太ももを掴む。その瞬間、ふにゅりと太ももが変形する。瑠香の太ももはマッサージの必要があるのか分からないほどに柔らかくて、もちもちしている。


「それじゃあそのままキュッキュッて感じで掴んでみて?」

「こ、こうか?」


 俺は言われた通りに力を入れて、抜いてを繰り返す。


「んっ……いい感じ。そのまま続けて」

「わ、わかった」


 一定の間隔て、力を入れて抜いて、少しずつその位置を膝の方へとずらしていく。それを往復して繰り返す。


「んん……はぁ~」

「だ、ダメだったか?」

「ん? あ違う違う、気持ちよくて思わずため息が出ちゃっただけ、続けて」


 俺は瑠香に言われた通り、もう一往復マッサージを行った。

 瑠香の太ももの感触は、触り心地が良く、ずっとこうしてマッサージをしていたいほど癖になる触感だった。


「おっけい。降りて!」


 瑠香の掛け声がかかり、俺は瑠香の身体の上から降りる。

 瑠香は吐息を吐きながらゆっくりと起き上がった。


「大分上達して来たわね。これで後は最後のマッサージよ」

「まだあるのか……」

「バカね。最後のマッサージが一番女性にとってはうれしいこと間違いなし。一番気持ちよくなれるマッサージよ? ほなてぃー相手でも、80点は余裕。いや、120点が取れるわ」

「な、なんだと……!?」


 そんな秘儀のマッサージがあるのか! それを早く教えて欲しかった。


「でも、今やってきた二つのマッサージをした後じゃないと、このマッサージは効果がないの。だから、これは最終段階でやること、いい?」

「つまり、今の二つが出来てからこそできるマッサージってことか」

「そういうこと」


 一体どんなマッサージなんだ?

 真剣な面持ちで待っていると、瑠香はそのまま仰向けに倒れ込んだ。


「恭太は私に覆いかぶさるように四つん這いになって」

「へっ!? 四つん這い!?」

「そう、いいから早く! 効果が薄まる!」


 瑠香にせかされるままに、俺は慌てて瑠香の上に覆いかぶさるようにして四つん這いになった。

 見つめ合う俺と瑠香。

 しばしの沈黙……


「る、瑠香?」

「はっ!?」

「だ、大丈夫か?」

「だ、大丈夫よ。なんでもないわ」


 そう言いつつも瑠香の頬は赤く紅潮しているように見える。瑠香は誤魔化すように話を続ける。


「いい? これは力加減が難しいから最初は身体の反動だけでもいいわ。徐々に慣れていきなさい」

「お、おう……わかった」


 すると、俺の右手を瑠香が掴み、そのまま自分の胸へと導いた。

 そのまま俺はむにゅりと瑠香の胸を触る羽目になる。


「ちょ!? 瑠香!?」


 瑠香は恥ずかしそうにしつつも、懸命に俺に教えるために言葉を紡ぐ。


「い、いい? そのまま指で胸の上あたりを回すように押して?」

「こ、こうか?」


 試しにやってみるが、胸の上とはいえ柔らかくて、正直できているのか分からない。

 というか、その下にある大きな膨らみがもろ手に当たっちゃってるせいで、そっちに意識が集中してしまう。


「あっ……うん。いい感じ。なんなら、胸を揉みながらその上の部分をちょっと指で力入れると、凄いいい」


 言われるままに瑠香のその胸をガシっと掴み、胸を揉みながらも意識を指先へと向ける。


「あぁっ……♡」


 すると、瑠香が今日一番の嬌声まじりの声を漏らす。


「ど、どうした?」


 俺が心配して尋ねると、瑠香は恥ずかしそうに身をよじる。


「だ、大丈夫……気持ちよかっただけだから、もっと続けて?」

「わ、わかった」


 そんな甘美的な声で言われてしまったら、続けるしかなかろう。


 俺は胸を揉み解しながら、胸の上の部分を刺激する。


「あぁっ……いいっ……気持ちいい……♡」


 瑠香の声もだんだんと甘くなっていき、今は息を荒げながら蕩けた表情になっている。


「恭太ぁ~……あっ……次はぁ……胸の下あたりもほぐしてみてぇ~」

「ここか?」


 俺が胸の下あたりをぐりぐりといじくったその時だ。


「あぁっ!!♡」


 今日一番の嬌声が瑠香の口から零れた。


「ここだな!」


 俺は瑠香の反応が一番良かった部分を重点的に攻める。


「あぁっ……恭太ぁ……こらぁ! あっ、ダメぇ……いぃ……♡」


 最後は胸を鷲掴みにして、上下両方を刺激する。


「あっ……はぁ~ん!!!!!」


 その瞬間、蕩けきった声が瑠香の部屋に響き渡った。


 大きく口で息を吐き、火照りに火照って頬が紅潮し、蕩けきった目で見つけてくる瑠香。


 俺はしてやったり顔で、瑠香を見つめた。


「俺のマッサージ。そんなによかったか?」

「もう……バカ……」


 恥じらうように手で目を隠す瑠香。

 だが、チラっとこちらを見ると、恥じらいながらも甘い声で言った。


「すごい気持ちよかった……」

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